基礎知識Q&A

企業年金の普及に向けた中小企業の取り組み

2025年10月30日

Q.
従業員の福利厚生や人材確保にあたり、老後の所得確保を支援する「iDeCo+(イデコプラス)」という制度があることを知りました。どのような制度なのでしょうか。また導入にあたってどのような点に注意すればよいのでしょうか。

A.
iDeCo+(中小企業主掛金納付制度)とは、iDeCo(個人型確定拠出年金)の仕組みを活用して、従業員の掛金に事業主が上乗せするもので、少ない事務負担で中小企業の福利厚生を拡充できる制度です。これは、就職・転職希望者が重視するポイントでもあり、優秀な人材の確保や離職率を下げる取り組みにもつながります。また、事業主が拠出した掛金は、全額損金に算入されるというメリットもあります。
従業員からすれば、上乗せされた掛金が、所得税や社会保険料に影響せず、自身の選択した商品の運用が好調であれば、老後の資産形成に役立つことでしょう。

iDeCoとは・・・
私的年金制度のひとつで、自ら拠出した掛金を運用し、60歳以降に給付金を受け取るもの

iDeCo+とiDeCoの詳しい制度内容については、下記ホームページ等を参考にしてください。
●厚生労働省「iDeCo+のご案内(事業主向け)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000194195.html
●厚生労働省「iDeCoの概要」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/kyoshutsu/ideco.html

導入にあたって事業主が注意すること

  1. iDeCo+はiDeCoに加入している従業員のみが対象になります。そのため、従業員に対してiDeCoの利用を案内する際には、メリットだけでなく、「原則60歳まで資金を引き出すことができない」、「利用の際に手数料がかかる」、「元本割れのリスクがある」といったデメリットも含めて制度周知を行うことが大切です。
  2. 就業規則等の見直しをするとともに制度内容を従業員に周知することが求められます。また、労働組合または労働者の過半数を代表する者の同意が必要になりますので、導入に向けては労使間の話し合いを進めておくことが重要です。
  3. 加入者掛金と事業主掛金の合計には限度額がありますので、掛金の上限額が大きい「企業型DC(企業型確定拠出年金)」と比較し、拠出できる掛金が低めになります。そのため、役職や勤務年数などで掛金に差を設けることは可能ですが、大きな差を設けるのは難しくなります。

iDeCo+には制度設計や就業規則の見直し等が伴いますので、導入にあたっては社会保険労務士などの専門家へ相談しながら検討するのがよいでしょう。

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