基礎知識Q&A

従業員が退職後、給与支払日の前に給与を請求した場合について

2025年2月25日

Q.
従業員が、家庭の都合で急に退職することになりました。給与の締切日や支払日の前に、働いた分の給与を支払ってほしいと言われました。給与支払日前であっても支払わなければならないのでしょうか。

A.
1.金品の返還(労働基準法第23条)
従業員が退職や死亡した場合に、権利者の請求があった場合には、7日以内に賃金等、従業員の権利に属する金品を返還しなければならないとされています。この場合の「金品」が指すものには、賃金、積立金、保証金の他に、労働者に権利が発生する全てのものが含まれます。
以上のことから、退職した従業員から請求があった場合には、7日以内に給与を支払わなくてはなりません。また、7日経過前に給与支払日があれば、その時までに支払いが必要です。
ただし例外もあり、賃金や金品について争いがある部分については7日以内の返還は必要なく、退職金については、就業規則で定められた時期までに支払えばよいとされています。

2.非常時払(労働基法第25条および同法施行規則第9条)
「金品の返還」と同じように、請求されたら支払わなければならないものに、「非常時払」がありますので、こちらもご紹介します。
「非常時払」とは、「労働者または労働者の収入によって生計を維持する者が、特定の費用に充てるために請求する場合には、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない」という制度です。以下の場合が該当します。
①出産したとき
②疾病にかかったとき
③災害を受けたとき
④結婚したとき
⑤死亡したとき
⑥やむを得ない事由により1週間以上にわたって帰郷するとき
あくまでも①~⑥の費用に充てるために認められるものであり、「金品の返還」とは異なり何日以内に支払わなければならないという規定もありませんが、使用者は請求があった場合には速やかに支払うべきとされています。

3.罰則(労働基準法第120条1号)
「金品の返還」及び「非常時払」は法律に定められた使用者の義務であるため、支払いを拒否し、この規定に違反した場合には、30万円以下の罰金に処されます。

4.最後に
非常に稀なケースですが、実際に請求されることはあり得ます。罰則が課される場合もあることから、この機会にしっかり確認してみてはいかがでしょうか。

次のページは