社労士コラム

女性活躍の支援を通じて「誰も」が働きたいと思う環境づくりを

特定社会保険労務士
浦山 一豊 氏
顧客(社会)に選ばれるためには、まず従業員に選ばれ、全員が「自分事」として考える組織づくりが必要です。
女性の就業にとって障害となっている課題を克服することは、結果として男女、年齢を問わず、誰もが納得して働きやすい職場づくりにつながっています。

皆様の職場の人員構成は、どのようになっていますか。男性、女性、正社員、有期雇用、短時間・短日数勤務、定年再雇用と様々な分類ができると思います。正社員だけ、パートだけ等、特定の集団だけに注目して意見を吸収したり、一部の意見を他に押し付けても組織全体の相互理解は進みません。多様な属性の存在は、多様な意見を吸収できる絶好の機会です。自社内の多様性を踏まえ、従業員満足度の向上を目指す取り組みは、対外的には顧客価値の向上や創造につながる新しい発想のきっかけとも言えます。

先日、最低賃金引上げの答申がなされ、10月からは29円アップの822円になる予定です。継続的に生産性改善や効率化をすすめ、顧客価値の向上・創造がなければ健全な賃金引上げはできません。一部の誰かが頑張って生産性や効率を上げる、あるいは誰かが顧客価値について考えているだけでは、昨今の環境変化に対応できないのではないでしょうか。今般の新型コロナ対応で皆様が経験されたように、答えがない状況下で、困難を乗り越えていくためには、できる限りの情報、知恵や経験の集約、そして組織全体の目的共有が大切であると感じています。顧客(社会)に選ばれるためには、まず従業員に選ばれ、全員が「自分事」として考える組織づくりが必要です。

男性と比べ、女性にパートタイマー等の非正規型雇用が多い傾向があります。賃金が上がっても税制上の扶養の範囲が変わらない限り、女性の収入は上がらないかもしれません。しかしながら、組織としては、「もっと働きたい」と思ってもらう仕組みづくり、正社員への転換を促進する環境と準備、そもそも非正規の方々にも十分に能力を発揮してもらう環境づくりが必要となります。働き方改革への取組みもその一つです。当初から正社員と均衡のとれた処遇をしていれば、正社員化した場合も大幅なコスト上昇なく転換が可能ですし、もちろん、処遇に対する不満解消や責任感の向上等、非正規個々の充実感も増すものと想像できます。また、70歳までの就業機会確保が努力義務化され、働く期間はおよそ50年に延長されようとしています。出産、育児等による女性のキャリア中断や制限ある働き方の課題は、介護、療養と就業の両立等の場面で男女問わず多くの従業員が直面することになるでしょう。労働時間、休日、休暇、働きに対する公平な処遇、キャリアを途絶しない教育体制の整備、在宅勤務、ハラスメント対策等、女性の就業にとって障害となっている課題を克服することは、結果として男女、年齢を問わず、誰もが納得して働きやすい職場づくりに繋がっています。

男性の働き方や生活スタイル、育児等への考え方も大きく変わってきつつあります。女性活躍の支援を通じて、潜在的な女性の能力発揮を促すことは、企業の適応力を向上させ、未来を担う人材確保にも寄与します。まず、身近なところから取り組んでみましょう。

※この内容は令和3年9月に公開されたものです。