Q.
本年4月からの「70歳定年努力義務化」、「同一労働同一賃金」等働き方改革関連法案施行が続き、雇用ルールが変わってきている。
労働者の多様な働き方の中で生産性を高めてゆくためには、数年前に作成した自社の就業規則の内容や運用に不安があり、改定を考えたい。
A.
労働基準法で定める就業規則の義務的事項・記載内容事項等は、紙面の関係上省略し、ここでは、昨今の情勢に対応した就業規則の改定・点検に関し、留意すべき点を述べてみます。
① 従業員区分の定義と適用範囲を明確にすること
働き方が多様化した現在、会社には正社員以外にも様々な形で働く社員が存在します。これらの社員区分の定義は法律に定めがあるわけでもなく、会社として定義を定めて行く必要があり、その定義に従い就業規則の適用範囲を決めて行くことが求められます。社員区分の定義と規則の適用範囲が曖昧な状態になっていると、会社は正社員だけの条件と思って規定したルールがパートやアルバイト、契約社員にまで適用される恐れがあります。社員区分がたくさんあるのに就業規則が1種類しか無い場合は要注意です。
② 就業規則と労働契約書(労働条件通知書)の整合性が必要
この2つはセットで考える必要があります。就業規則に労働契約書に定めるという規定があっても、実際には、労働契約書がない場合や労働契約書を改定しても就業規則が古いままになっている場合など、この2つに整合性がなく、様々な区分の社員が存在しているのに、正社員の就業規則しか作成していない場合は、原則として正社員以外の従業員にも正社員の就業規則が適用されます。パートやアルバイトは個別に労働契約を結んでいるから大丈夫と思っている経営者の方は要注意です。なぜなら就業規則に規定される待遇と労働契約書の待遇では就業規則が優先されるためです。よって就業規則には「この規則は正社員のみに適用する。契約社員・パート社員については別に定める。」と明記し、契約社員・パート社員の就業規則を個別に作成し、「各人の詳細な労働条件は個別の労働契約書に定める。」と定める必要があります。
③ 同一労働同一賃金における2つの指標(均衡待遇・均等待遇)
同一労働同一賃金の2つの指標(均衡待遇・均等待遇)を理解し、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との不合理と認められる待遇の相違を解消するには就業規則の変更が必要となる場合があります。
また、定年に達した後に継続雇用をされた有期雇用労働者についてもパートタイム・有期雇用労働法の適用を受けます。この場合、合理・不合理の判断は様々な事情が総合的に考慮されて通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が許容される範囲かどうかが問題となります。その他、給与制度の改定・整備も考えられますが、労働者への不利益変更については十分な理解と合意が必要です。