会社の概要について教えてください。
昭和43年9月の創業以来、土木工事の請負・施工、骨材の生産・販売などを行っています。土木工事では、国土交通省や山形県、新庄市などの官公庁から公共工事を受注し、道路や橋梁の建設・維持管理、河川や防災設備といったインフラ整備を通じて、地域社会の発展に貢献しています。
令和6年度に建設教習施設「石男くんトレーニングセンター」を開設し、人材育成にも力を入れています。この施設は、初心者から経験者までを対象に実践的な技術や知識を提供することで、建設業界の未来を創る役割を担っています。
働き方改革の取組について教えてください。
少子化が進む中で、企業が持続的に成長するためには人材の確保がとても大切になります。そのために、仕事と家庭の両立を支援することで、社員が安心して長く働ける環境を整えることが必要だと考えています。社員がワーク・ライフ・バランスを実現させるためには時間外労働の削減が何よりも必要ですので、DX化を推進し生産性を向上させることと、採用に力を入れる事により現場体制を充実させることに特に取り組みました。さらに、社員が自身の健康やプライベートの充実を大切にし、仕事と生活のバランスを保てるように、会社全体で有給休暇取得促進に力を入れています。
取組の効果はいかがでしょうか。
取組を始めた頃は、会社全体の有給取得率が低かったので、社員の意識を変えてもらう必要がありました。加えて、社員一人ひとりに福利厚生の制度や働き方改革について理解を深めてもらう必要があり、会社全体での説明会を開催しています。
そうしたこともあり、今では冬季の除雪期間を除き、残業時間は1日平均4分、有給休暇の取得率は90%を達成しました。高い有給取得率は、社員の満足度や生産性の向上に繋がっています。
また、弊社は男性社員の割合が高いですが、男性の育休取得率も上がっています。お子さんが生まれることを早めに報告してもらえれば現場作業の人員を調整できますし、問題なく休んでいただけます。ただ、そのためには人員に余裕がないといけませんから、採用もさらに努力しなくてはいけないと考えています。
今は学生の採用活動をしていても、男子学生から育休について聞かれることが増えてきました。男性育休の取得実績があるかが、会社選びの一つの判断材料になっていると感じます。
人手不足ですから、様々な事情がある社員にも活躍してもらわないといけません。農業と兼業している若手社員がいますが、農業が忙しい時期はそちらに専念するので、その間の数か月は出社しないなんてこともあります。我々としては前もって相談してくれれば、そのような働き方でも問題ないと考えています。むしろ、そうした社員のことも応援してあげられる会社でありたいです。
女性社員も活躍されていますね。
これからの建設業には女性の活躍が不可欠ですので、そのための環境づくりが大切だと考えています。女性社員の数は徐々に増えてきていますので、現場事務所に女性専用更衣室や女子トイレを設置して、快適に働けるような環境整備を行っています。やる気と能力があれば性別に関係なく成果を出すことができますし、建設業や土木の知識がなく入社しても問題ありません。弊社では男女で賃金格差はありませんので、男性より昇給が早い女性社員もいるくらいです。
現場監督として最前線で仕事をしていたり、建設ディレクターとしてICTのスキルを使って現場をサポートしていたり、広報として会社のブランディングに力を発揮していたりと、様々な業務で女性社員が活躍しています。
福利厚生に関する他の取組はありますか?
社員の方が仕事や人間関係、プライベートな悩みなどを相談できる「こころの保健室」というものを開設しました。これはパーソナルケアの専門家に、LINEから気軽に相談できるというもので、同僚には言いにくいけれど誰かには聞いてもらいたいという些細な悩みも聞いてもらえると、社員の方からも好評です。
社内の人間関係やコミュニケーションに関する相談が増えてきていたので、なかなか管理部だけでは対応しきれなくなってきていましたし、何より相談を受ける側の担当社員の精神的な負担も相当なものがありました。人間同士なので、どうしても相性はあるわけですが、仲間のそうした話を聞くだけでも辛いものです。今では、一度外部の人を介することで状況が整理されるので、管理部としても対応しやすくなりました。この窓口を始めて本当に良かったです。
DX化による業務効率化について教えてください。
社内で勤務管理のアプリを導入して、出退勤や休暇などをアプリ内で管理できるようになりました。建設業では現場での作業が当たり前で、会社でタイムカードを切るということはありません。これまでは現場ごとに紙の出退勤簿を記入する方法でしたが、今では職員のスマートフォンから簡単に登録できるようになりました。時間外の管理や給与計算もアプリの情報と連携しているので、総務としてもかなりの効率化になりました。
また、有給休暇の取得率がかなり上がったと思います。アプリで残日数がすぐに確認できるので、みなさん先のスケジュールを見越しながら計画的に休みを取るようになりました。これまでは休暇申請書を記入して提出してもらっていましたが、少し心理的なハードルがあったかもしれません。直前でない限りは、アプリを使って自由に休みの申請ができますので、目に見えて休暇取得率が上がりました。
他にも効果が大きいのが人員配置です。これまでは作業員をどこの現場に配置するのかを、朝に一度集まってから指示しましたが、今はアプリを通じて前日に個人のスマートフォンに通知が届きます。作業員だけでなく、現場までの配車も一括で管理できるので、かなり業務効率が上がりました。
他にも、緊急時以外は原則電話をやめることにして、社内にチャットツールを導入しました。初めのうちは慣れない社員から電話がかかってくることもありましたが、今はかなり減りましたね。チャットに残すことで言った言わないのトラブルも無くなりますし、何より、こうした新しいツールを使っていかなくてはいけないんだと社員側の意識が変わっていったのが非常に大きいと思います。苦手な社員もいたとは思いますが、建設業でもデジタル化の流れに乗らないといけないですし、その後の社内のDX化の取組にも繋がったと思います。
さらに、社内では若手を中心としたDXチームが現場のデジタル化支援を行い、書類作成やデータ整理、ICT機器の設定・運用などをサポートすることで、現場監督の負担軽減にも大きく寄与しています。今は生成AIも導入しており、発注者とのやり取りの文字起こしや単純なデータ整理といった定型業務の効率化を進めるほか、AIに現場写真を読み込ませて危険予測をしてもらい、想定されるリスクを把握することで安全性の向上に繋げています。

柿﨑部長は建設インフルエンサー「石男くん」として情報発信に力を入れています。きっかけを教えてください。
新型コロナウイルスの影響で時間に余裕ができた時期がありまして、その時期に私の発案で始めました。当時は対面の企業説明会もなかったので、少しでも会社のことを知ってもらうきっかけになり、学生の採用に繋がればと考えていました。また、建設業界全体として、休みが増え残業も減少しているなどの働き方改革や、工事単価の上昇により持続的に利益を上げられるようになってきていることなど、この7~8年くらいで環境が良くなってきています。一方で、それが業界の外に伝わっていないという問題意識があり、そういった建設業の良い面を発信して、業界の魅力を上げていきたいという思いもありました。地方の会社として知名度を上げていくとなったときに、YouTubeやInstagramといった利用可能なメディアを何でもとりあえずやってみようと思い切って始めてみました。最初は中々認知されませんでしたが、今では全国の建設会社が見学に来たり、応援してくださる企業も増えてきており多くの人に見てもらえるようになって、会社の知名度を大きく上げることができたと考えています。
建設業界はただでさえ人手不足ですから、人材獲得競争が激しく、経験者を中途採用するというのは容易ではありません。それでも、YouTubeを見て弊社を知って入社してくれた中途の社員もいますから、本当に大きな効果がありました。今の時代は、SNSを活用することは企業の生き残りに必須なのではないでしょうか。
昨年の4月に「石男くんトレーニングセンター」を開設され、建設業に携わる人材の育成にも取り組まれていますが、どのようなきっかけで設立されたのでしょうか。
石男くんトレーニングセンターは山形労働局認可の登録施設で、小型移動式クレーン操縦、玉掛け技能、不整地運搬車運転に係る資格の取得が可能な建設教習施設です。
設立のきっかけは、これまでは社員が資格講習のために外部の研修場に行ってしまうことで、現場のスケジュールに影響が出ていたことです。外部の講習スケジュールに合わせなければならず繁忙期の人員確保に苦労することもありましたし、逆にこちらの閑散期に資格を取ることができれば効率的だったので、自前の施設を持ちたいという希望を持っていました。
今では、社員への安全講習もしっかりした設備で行うことができ、スケジュールの融通も利きますので社員のスキルアップも早いです。弊社の社員以外も受講できますので、庄内地方の会社の方が来ることも多いです。いずれは工業高校の生徒の資格講習にも利用してもらいたいと考えていて、学校からの見学も受け入れています。
センターの講師は、弊社の社員が現場を掛け持ちしながら務めていますが、将来的には定年後の社員がセンターの専任講師になってくれれば、より多くの人を受け入れることができるようになります。これからの建設業を担う若い人材を育てるとともに、退職後の社員にも活躍の場があるとなれば理想的ですね。

これからどのような会社にしていきたいですか。
ここ10年くらいかけて働きやすい職場づくりや業務効率化、採用の強化を進めてきました。また、YouTubeなどを通じて外部に自社の良さをアピールしてきたことによって、知名度も上がってきました。そのうえで私たちが目指しているのは、ここで働いている社員が自分の会社のことを誇りに思えるような、新庄砕石工業所で働けて良かったなと思ってもらえる会社にすることです。社員が楽しそうに働いている会社は、地域の方からも愛される、応援してもらえる会社だと思います。「現場と地域をもっと面白く」を合言葉にして、もっと地域の方々に必要とされる建設会社になっていきたいですね。

やまがたスマイル企業(ダイヤモンドスマイル企業)
株式会社新庄砕石工業所ホームページ https://www.shinjosaiseki.com
取材:令和7年10月









