企業インタビュー
東根市

株式会社山本製作所

「人づくり」を大切にした職場づくり
総務人事グループ グループリーダー
矢口 貢 氏

総務人事グループ
東海林 美奈子 氏

広報グループ グループリーダー
正成 隼人 氏

<会社概要>
〒999-3701 東根市大字東根甲5800-1
電 話:0237-43-3411
資本金:9,600万円
設 立:1918年
社員数:307名(男 274名 女 33名)
令和6年1月1日現在

会社の概要について教えてください。


山本製作所は、1918年(大正7年)に山形県天童市で創業された機械メーカーです。農業機械、特に穀物乾燥機や稲わらカッターで国内トップシェアを獲得してきました。当社の特色として、製品の開発設計から製造・販売・アフターサービスまでを一貫して行う機械メーカーという点が挙げられます。前述の農業関連機器を中心に、スーパーマーケットの駐車場などに設置されたコイン精米機「こめ太郎」などの精米加工関連機器や、木質ペレットストーブ、不要になった廃プラスチックをリサイクル原料に変える環境関連機器など幅広い製品を手掛けています。
「人をつくり、商品をつくり、豊かさをつくる」という経営理念と「つくる力で世の中をワクワクさせる」というビジョンのもと、社員の能力や自主性を高める職場環境をつくり、より良い商品・サービスを生み出すことによって、全国そして世界の抱える社会課題の解決に貢献することを目指しています。

働きやすい職場づくりのために、どのようなことに取り組んでいますか。

社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しており、各職場でデジタル技術の活用と働き方の変革を進めています。また、各種休暇、休業制度を積極的に利用するよう継続して呼びかけていて、育児休業については、2023年は男性5名、女性3名が取得しました。
これらの取組みは、今後加速していく少子高齢化への対応として、生産性の向上と労働力確保(新卒・中途採用、雇用延長)を目的としています。労働生産性をより高めるためにはどうするか、人が集まり定着する会社にするにはどうするかを日頃から考えています。

社内のDXというと、具体的にどのような取組みをされていますか。

社内のあらゆる場面で、作業の自動化や、クラウドを用いた一括管理などを進めています。
例えば営業職なら、かつては顧客にアポイントメントをとって訪問するスタイルが主流でしたが、最近ではWEBからの問い合わせやカタログのダウンロードなどの際にメールアドレスを入力してもらい、顧客のアクションに応じて自動でメールを送るなど、そうしたツールを用いて仕掛けていく営業スタイルを取り入れています。そして、いつどのような営業を行ったかを記録に残し、顧客の情報が社内で共有されることで、誰が担当になっても、その顧客とのやりとりの経緯や次に必要なアクションがわかるように管理しています。
技術職においても、かつては品質試験等を目視で行っていましたが、機械で自動判定できるシステムを取り入れるなど、積極的な自動化により業務の効率化を図っています。
また、社員の勤怠管理ではクラウドを活用し、どの職種でも、どこで仕事をしていても、社員が自ら勤怠を入力できるようにしています。こうすることで、きちんと労働時間に見合った給与を支払うことや、時間外労働の縮減に役立てています。
社内のDXにおいて、ツールを導入したとしても、そのツールを実際に社員に使ってもらわなければ意味がありません。長く勤めている社員の場合、勤怠管理をはじめとした様々な場面で逐一システムに入力するのに抵抗がある方もいます。そうした方には、より仕事の負担を軽減させながら成果をあげていくための取組みであることを丁寧に説明し、使ってもらう意識付けを行っています。この意識付けが最も大きな課題です。

育児休業の取得状況と、取得しやすくするための取組みについて教えてください。

2023年は男性5名、女性3名が取得しました。男性も多くが1か月以上取得しています。社長をはじめ部門長の方々にも、育休取得について深く理解してもらっております。社員にお子さんが生まれたときは、育休とれますよと総務からきちんと説明もしますし、ある程度まとまった期間をしっかり取りましょうという風潮が高まっていると思います。また、産後パパ育休制度をはじめとした最新の法改正については、適時社内報でお知らせし取得を促します。社内報には、男性社員の育休を取得した経験談なども掲載しており「お子さんが生まれたら育休をとるのが当たり前だよ」という雰囲気づくりをしています。
また、休業中の仕事は周りの社員できちんとカバーできるように、普段から業務が属人的にならないよう、チームとして進捗を管理しています。取得期間が特に長い場合は、代替社員を雇用する場合もあります。さらに、職場復帰後のサポートとして、お子さんが小学校に入学するまで利用できる短時間勤務制度を取り入れており、多くの社員が活用しています。今後は、より制度を利用しやすくするために、取得条件となるお子さんの年齢を引き上げることを検討しています。
 【ペレットストーブの燃料に用いる木質ペレット】

若手社員の定着や人材確保に向けて取り組んでいることはありますか。

①研修制度の見直し
新入社員の育成や定着のために、研修制度の見直しを行っています。研修をうまく組み立てなければならないという話は社長とも常々しており、入社から数か月間は決まった部署への配属はせず、様々な部署での業務を経験させています。
例えば、営業職でも製造の現場に入って、「ものづくり」をしっかり経験させます。そうすることで、営業の立場で活動した際に、生産工程の苦労を理解しているので、売り方や心構えも変わってきますよね。その逆も然りで、
製造職の人たちも営業の研修をすることで、大変な思いをして売っているんだとわかるようになります。こうした「相互扶助の精神」は、代々経営者の教えとして100年の歴史の中で脈々と受け継がれてきたものです。
このように研修には力を入れてやってきていますが、この研修期間を少し短縮し、より短期間に濃い経験ができるよう組み直すことを考えています。
というのも、これまでは研修が終わって配属される時期がちょうど会社全体の繁忙期で、新入社員自身も、配属先の上司も忙殺されてしまうという現状があるんです。そのため、今よりも少し早めの時期に配属して、配属先としっかり関係を築き、その上で、いざシーズンインというような形にした方がいいのではないかという趣旨です。

②地域イベントへの参加
当社だけでなく、県内の製造業全体で将来的な人材確保が大きな課題です。いまの子どもたちは生活の中でモノを作るという経験が少ないので、県内の製造業に目を向けてもらうために、就職活動をする前の段階の子どもたちにモノづくりの楽しさを伝えることが大事だと感じています。最近では県内の高校主催のミニ四駆のイベントに協賛して、実際に子どもたちとミニ四駆を作って走らせるというようなことをしました。ほかには、県内の中学校や高校で開かれる、製造業の会社が集まる企業説明会に参加しました。こうしたイベントに参加・協力することを通して、子どもたちがモノづくりに触れる経験をすること、県内の製造業について知ることに貢献できればと思っています。

③学生を含む若手との信頼関係の形成
入社前のインターンシップの段階から、長期的な視点で学生との信頼関係を築いていくことも重視しています。インターンシップでは、モノを開発して作って売るという、上流から下流までしっかりとストーリーがわかるように様々な経験をしてもらいます。また、参加してくれた学生とは、その後も採用関係のイベントなどで顔を合わせる機会があればコンタクトをとり、互いの想いを共有し信頼関係を築いていくことで、内定辞退や入社後のミスマッチを防ぐことにつなげています。
入社後も、研修期間に同期とのつながりを作るよう呼び掛けたり、1~2年目の若手を採用イベントに連れて行き学生と話をしてもらったりすることで、自然と会社への帰属意識を持ってもらえるように工夫しています。このように、入社前から入社後にいたるまで、若手と丁寧に向き合い続けることで定着を図っています。

会社の雰囲気や働き方に対する社員の方の声をお聞かせください。

(2010年中途入社の方より)
真面目で優しい方が多く、お互いに助け合う社風があるので、職場は柔らかく温かい雰囲気です。時期によって多少の残業や休日出勤はありますが、会社として残業や休日出勤の抑制に取り組んでおり、年々状況は良くなっていると思います。特に良いところは、GW・夏季休暇・年末年始休暇が長いこと(少なくとも1週間以上)と、有給休暇が取りやすいところですね。私は旅行が趣味ですが、家族旅行が企画しやすいので助かっています。

今後考えている働きやすい職場づくりの取組みについて教えてください。

これからの様々な取組みの足掛かりになるものとして、定期的な従業員エンゲージメント調査を実施していきます。昨年、第1回調査を行ったのですが、社員が会社に対してどういう思いを抱いているのか、会社側が想像していた部分の答え合わせができて、対策を考えることができるようになったことが一つ、進歩だと思います。
具体的に今後考えていることとしては、まずひとつにシニア層の待遇改善です。人手不足対策として、新卒採用に注力するだけでなく、ベテラン社員にこれまで以上に活躍してもらうことも必要だと考えています。二つ目は社員の階級別研修制度の再構築です。これまでは、職位が上がることが決まった人に対して、次の職位で必要な知識の習得や意識付けを中心に行ってきましたが、今後は職位が上がることが決まる前に、次の職位に向けた研修を行うことを検討しています。こうすることで社員が自らのキャリアプランを可視化しやすくするとともに、会社の中間層に対する研修をより充実させることにつながります。
これらのような新しい試みを考える上で、現状に対する社員の思いを把握するエンゲージメント調査が非常に重要になります。第1回調査結果のなかには、社長も驚いたことや、認識と違うこともあったようで、そこで得た気づきが今後の制度整備に活かされます。私たちはモノづくりメーカーとして、仲間を頼り、互いを助け、切磋琢磨し成長することを最も大切にしています。社員とともに、よりよい職場環境をつくっていきたいです。
 
山本製作所ホームページ https://www.yamamoto-ss.co.jp/

取材:令和6年1月