やまがた子育て・介護応援いきいき企業
第69回 沼田建設株式会社

山形県内での従業員数(2019年7月現在)
職員:女性14名 男性106名(合計120名)

◎どんな会社か

沼田建設株式会社は、昭和5年(1930年)に創業以来、地元新庄を基盤に土木・建築を請け負っている。現在は営業部・土木部・建築部・推進工法部をもち、特に推進工法部では使用されなくなった水道管等にモルタルを充てんして、地盤沈下を防ぐパルフォースモルタル工法の特許を保有し、全国各地で施工を行っている。

◎「やまがた子育て・介護応援いきいき企業」登録・認定について

優秀(ダイヤモンド)企業認定 平成30年9月(第2期目)

◎企業理念

沼田建設は『常に発注者(施主)の身になって、仕事を大切に、心を込めて施工し、感謝の気持ちを忘れない。』を経営方針の1つに掲げています。したがって、建設業として当社の活動のあらゆる面で環境負荷の軽減に取り組み、良好な地球環境の保全に努めることが企業の責任と考えます。

◎新しいものを率先して取り入れ、男女ともに働きやすい職場に

「家庭のことを大事にできずに、会社を大事にはできない」。そう語るのは笹健一専務取締役だ。家族と会社両方を大事にするために、沼田建設株式会社では新しい制度を率先して取り入れてきた。育児・介護休業や短時間勤務制度も、いち早く平成初期から取り入れていた。現在は時間単位の有給休暇も導入している。
「若い女性は結婚出産で大変だし、年齢を重ねると男女関係なく親の介護も出てきます。そうなると仕事だけをしていればよいとはいかなくなって、両立できるようにならないといけません。だから、休みや早退などが取得しやすい環境が大切です」。

時間単位の有給休暇を取り入れたきっかけは、行政機関で見たパンフレットだった。以前から「親の通院の送迎など数時間の用事のために、半日の有休を使うのがもったいない」と思っていた。時間単位で取得することで、平日にしか行けないちょっとした用事を済ませることができるその制度は、まさに、というべきものだった。
これを取り入れたことで、有給休暇の認識が変わり、有休を取得しやすくなったという。今では月平均5名程度が利用しているそうだ。

そういった社員目線の職場環境づくりが定着している沼田建設株式会社では、女性の平均勤続年数は約16年。笹専務取締役も、定年以外で退職する社員はほとんど見たことがないという。

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笹健一専務取締役

◎社員の家族や若い社員の声を聴く

社員向けのアンケートで本音を聞くことはなかなか難しい。社内の人間関係など直接的な関係があるからだ。そこで、沼田建設では家族向けのアンケートを実施している。定期的に行う家族向けのアンケートでは、なかなか聞くことのできない社員の家族の本音を聞くことができる。
また、若い社員の声を積極的に取り入れる活動も行っている。30代~40代の社員15名を委員に任命し、会社への要望をまとめ、それをでき得る限り実行するというものだ。
働き方改革の一環として昨年4月から始めたこの活動により、会社のロゴマークを刷新することとなった。さらに、作業着、カッパや封筒などもデザインや仕様の変更が実現した。

新ロゴマーク

◎優秀な人を要職に

沼田建設株式会社では現在4名の女性が現場監督として従事する。全員、30代だ。「実力のある人は、男女かかわりなく対等に出世します。『女性だからこれをやれ』というのはありません。今は女性の力を借りないと会社はやっていけません。できればまた採用したいと思っています」と笹専務取締役は話す。
土木部土木課で係長を務める安彦陽子さんも、その一人だ。
安彦さんは、建設コンサルタントで3年半務めた後、その経験をすぐに生かせる建設現場でのIT系サポートとして入社。今年で12年目になる。
当時の仕事は、建設現場にあるプレハブ小屋の事務所の中で、パソコンを使ってのサポートと書類作成の仕事。その時すでに女性の社員も多く、性別を理由にやりづらいと感じるようなことはなかったそうだ。気になっていたプレハブ小屋内での喫煙や男女共用だったトイレも、1、2年ほどで改善された。今では「快適トイレ」という着替えスペースまでついた洋式トイレが設置されるようになった。
安彦さんの転機は入社してしばらくたった頃だった。上司から『現場の資格を取ってみないか』と声をかけられ、二つ返事で『やります』と答えたという。意欲的に挑戦した安彦さんは、見事資格を取得。今では現場でメインの工事を任せられるほどになっている。

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土木部土木課安彦陽子係長

◎家庭に合わせた働き方

安彦さんは現在、3歳と0歳11か月の2人の娘を持つ母親だ。育児休業を長女の時に4か月、次女の時に5か月取得した。現在は短時間勤務制度を利用し、通常8時~17時までの勤務を、9時~16時半までと短縮して勤務する。毎朝子どもがぐずっても対応できるくらいの時間が確保でき、夕方も保育園の延長料金が発生する前に迎えに行けるという。
育児に対して職場の理解があるというのも大きい。
「子どもがまだ小さいので、急に具合が悪くなって保育園から電話が来ることもあります。朝、保育園に行く前に熱を測るんですが、その時に熱っぽいと思ったら、仕事場の人に朝のうちに『今日呼び出されるかもしれない』と話をしておきます。何もなければそれでいいし、きたら『やっぱり』という感じで迎えに行く。そういうことを『なんで?』と言われず『行ってこい』と送り出してくれるのでありがたいです」と安彦さんは語る。
しかし、どうしても抜けられない仕事がある時は、夫に子どもの迎えを頼んでいる。
「ご飯を作る以外のことは積極的にしてくれるし、保育園の行事にも行ってくれます」。同じような業種で働いているため、少し話をするだけですぐに理解してくれるのもありがたいという。

◎大事なのは共有すること

「二人目を妊娠しているとき、検診に行ったら1週間安静にしていないと入院になると言われました。さすがに1週間も仕事を休むのはまずいかなと思いつつ上司に電話をしたら、迷うことなく『わかった』と了承してくれました。仕事のことは常に同僚と共有するようにしているので、私がいなければいけないということはありません。今何をどこまでやったのかは同じ仕事場の人が知っています。ですので、休むことになっても安心でした」。
あの時はすぐに安静にしていたため入院せずに済んだ、と安彦さんは笑う。
「大切なのは、上司とコミュニケーションをとり、いつでも相談できるようにしておくことです。沼田建設では、自分の生活スタイルと会社のスタイルがあるけれど、どっちが優先ということではなく、バランスをとることができます。今は『女性だから』ではなく、男性で保育園の送り迎えをしている方もいるし、必要な人が必要な時間を確保できる会社だと思います」

◎インターンシップの積極的な受け入れ

また、インターンシップや会社見学にも積極的だ。中高学校や商工会議所が主催するインターンシップや職業体験、自動車学校の教習課程の生徒たちの会社見学、小中学校の教員が子どもたちに建設業を教えるために訪れることもある。そういったことを率先して受け入れるのは、地域にこんな会社があるのだと知ってもらうためだという。
「学校を卒業して就職するまで、若い人たちは地元にどんな企業があるのか知らないと思います。県外に就職してしまったらなかなか戻ってこないかもしれません。だから、こうして若い人を受け入れ、この会社がどういうことをしているのかを見せ、体験してもらうことで、将来の選択肢が広がると思うのです」。
昨年は12回受け入れ、見学に来た若者からお礼の手紙が届いたという。丁寧な字で書いてある手紙を読むと、嬉しくなるのだと笹専務取締役は語る。
「これから、若い人がもっと地元に残って、活気ある街になってくれればと思います。『入社するまでどういう仕事でどういう会社なのかがわからない』ということもよくあると思うので、私は積極的に見せていきたいと思います。一度こういう会社が地元にあるということを知ることで、戻ってきてくれるきっかけになればよいと思います」。

 
2019年9月2日