◎「山形いきいき子育て応援企業」登録について
登録日 平成23年7月10日
<人事面から複合的に支援>
「協同組合 労研センター」は社会保険労務士の合同事務所。県内では珍しい形態であり、その名の通り、社会保険労務士の有資格者による協同組合である。「商工会議所の建物のなかに事務所がある、これも珍しいのではないでしょうか」とは、専務理事の高橋久義さん。創業者である鈴木徳松氏が、当時の商工会会頭から声掛けを受けたのがきっかけだったという。
労研センターを母体に、平成2年に「株式会社労研」、平成22年に「ROKENワークス・アカデミー」、平成24年には「ROKENヒューマンフォース」を設立。「ROKENグループ」を形成し、アウトソーシング、システムエンジニアリング、人材プロデュース、人材育成・メンタルマネジメントとそれぞれの業務をリンクさせながら、人材育成やリクルート、業務の効率化など、企業に対し人事面から複合的な支援を行っている。
労研センターが提供するのは、ローコスト、ローリスクマネジメントを原点とするアウトソーシング業務。賃金計算をはじめ、社会・労働保険の代行、人事労務相談、行政書士業務などを請負っている。
<業務を細分化することで働きやすい職場に>
同センターの業務には「三大業務」ともいうべき、年に3回の繁忙期がある。労働保険、社会保険、年末調整の各申告である。かつてこの時期は、遅くまでの残業が当たり前だったという。そこでまず業務の細分化に着手、正社員でないと判断が難しいものと、そうではないものに分けた。業務をパーツごとに分けることで、正社員が残業でやっていた時間をパート職員がカバーできる仕組みづくりというわけである。ちなみに同社では、パート職員をサテライトメイトと呼んでいる。
その過程では、必然的にマニュアルのつくり直しも求められた。従来のものでは、正社員からサテライトメイトへ業務のバトンタッチをする際、うまく機能しなかったというのだ。「ポイントは、まず全体の流れがあって、そのうえで判断が難しい箇所を明らかにして、判断基準をしっかり示すこと。そして、業務のどの部分でパソコンを使うのか、これもはっきり分けてあげることです」。仕組みをつくり、マニュアルもつくり直したことで、残業は最低限となり、新たな仕事を受け入れられる余裕も生まれたという。
加えて、いわゆるパート職員の働き方にも、同社の考え方を見ることができる。「正社員だから、パートだからというのは、上下関係ではないんです。仕事をする時間帯が違うだけ、それが基本スタンスです」。
<自らモデルとなって業務改善>
また、同社が掲げ実践する「山形いきいき子育て応援企業」の取組内容は、アウトソーシングの受注元の企業でも実践されている。この業務、この形態ならではの事例である。
たとえば「繁忙期の時間外労働を減らしたい」、「社会との接点を持ちたい子育て世代の人材発掘を行いたい」とは、大半の企業が抱える課題であろう。これらの課題の解決に取り組み、自らがモデルとなって、受注元の企業へ業務改善の手助けを行っている。そこに絶大な説得力が生まれることはいうまでもない。
「働くということは、まず賃金を稼ぐこと。次に世間に認めてもらうこと、そして自己成長の場でもあります。そういう意味で、働く人がこの会社で働くことができて幸せだと実感できることが大切。会社は、働く人に選ばれて、その結果として売上げが伸ばせるもの。売上げが伸びない原因を、こんなところに求める視点も必要なのではないでしょうか」と高橋さんは言う。
◎取組み:女性の能力活用
・ 性別に関係なく、女性でも仕事力のある者の管理職登用に積極的に取り組む
→ 目 的 性別にとらわれることなく、仕事力で評価される組織づくり
→ 対 象 全員
→登用の基準 第一要件の社会保険労務士の資格取得と仕事力が他の者から認められること
→ 方 法 1. 役割の付与によるチャンスと動機づけ
2. 社内研修の実施
3. 各種セミナーの参加の促進
4. 勤続年数・性別に関係なく基準を満たせば処遇する旨を周知徹底
● 成果
かねてから、男女という性別で分けて考えることはなかった。これは、代表の考え方を反映したものということ
で、これまでに事務局長をはじめ、理事、副理事という要職に女性が就任してきた実績がある。
◎取組み:仕事と家庭の両立支援
・ 働きながら子育てできる企業環境の整備
→目的 働く意欲のある有能な女性の活用と仕事と生活の両立支援
→対象 子育てをしている女性等
→時間 9時30分~16時00分までのうち勤務しやすい時間
→内容 内勤できる事務全般
→方法 事務業務を数量化し、事前スケジュールを双方で緻密に立てる。
● 成果
出産、子育てが理由で一線を退いた女性が職場に復帰する際、勤務時間が最大の問題となる。日中の短時間ならば働ける、働きたいという要望に応えられるような体制を企業側が用意できるか、その解決策の模索があった。また、仕事復帰を望む女性にヒアリングした結果、その多くが賃金のみではなく、社会と繋がっていたいという気持ちが大きいということが分かった。
そこで実践されたのが、仕事を細分化することで計画的に仕事を割り振りできる仕組みづくりである。産休・育休を取得した職員に加え、このような条件での求人も実施している。これまでに、15年間で15名のサテライトメイトを採用。年間平均で4名、現在も5名が勤務している。ちなみに正職員からサテライトメイトへの転換希望は2名、サテライトメイトから正職員へは1名の転換者がいる。10年を超えて勤務しているサテライトメイトもいるそうだ。
◎取組み:男女がともに働きやすい職場づくり
・ 働きやすい職場=仕事を休まなければならない事態のときに、お互いが助け合える職場、また時間外労働が少なく家庭の時間がとれる職場と位置づけ、自分しかできない仕事のやり方をしない取り組みを実施。
・ 平成7年より業務細分化方式により複数担当制を実施
→目的 働きやすい職場環境づくりと経営の両立
→対象 全社員
→内容 比較的難易度が低い業務
→業務手順ごとに難易度を分類し業務を細分化。細分化したものを全社で研修し誰でもできる業務に転換する。
● 成果
手順ごと、難易度ごとに業務を細分化し、運用しやすいマニュアルをつくった。このことで、まずはサテライトメイトへ業務をわたすことが容易となり、正職員の残業時間を大幅に削減することができた。繁忙期でも残業がほとんどなくなったという大きな効果をもたらしている。
ジョブローテーションが容易となったため、従来は単独で担当していた業務が複数担当となり、職員は計画的に休むことができるようになった。
マニュアルの刷新により社員研修も容易となり、社員の仕事力向上に繋がった。また、これまでは手一杯で受け入れられなかった仕事も受けられるようになるなど、会社全体の生産性も向上している。