女性903名 男性658名(合計1,561名)
株式会社荘内銀行(代表取締役頭取 上野 雅史)は、明治11年創業の第六十七国立銀行を前身とし、昭和16年に設立され、平成30年に140周年を迎える。
現在、79店舗ある。
平成17年に厚生労働省の「均等推進企業表彰」の「厚生労働大臣優良賞」を受賞し、平成21年には「山形県ワーク・ライフ・バランス優良企業知事表彰」を受賞、平成26年に山形県いきいき子育て応援企業「優秀(ダイヤモンド)企業」に認定、また、平成28年には女性活躍推進法に基づく厚生労働大臣の認定を受け、最上位である「えるぼし」を東北初、県内第1号として取得した。
◎「山形いきいき子育て応援企業」について
優秀(ダイヤモンド)企業 認定 平成26年1月
◎企業理念
創意と熱意、卓越した情報力を駆使して、人々と地域、社会の夢の実現を支援する「革新の金融情報サービスグループ」をめざす。
◎「女性の能力発揮は企業発展のキーワード」
荘内銀行では、平成8年から行員処遇に関する経営方針の一つとして「女性の能力発揮は企業発展のキーワード」を掲げ、女性の採用拡大と業務範囲の拡大、女性管理職の増加、就業の継続、職場環境の改善などに積極的に取り組んできた。女性活躍に重点を置く荘内銀行の取組みについて、人事部働き方創造室長の佐藤由美さんに聞いた。
「荘内銀行では、リテール(個人を対象とした商品など)分野に重点を置き、平成11年にイオン山形北店に1号店を出店したのを皮切りに、商業施設内に店舗を設置(インストアブランチ)しています。そこには女性のお客様が多くいらっしゃいますので、同じ目線に立ってお話しできるよう、インストアブランチには女性行員を積極的に配置しました。ビジネスモデルの中で女性の適正が活かされたケースです。」
多くの女性が活躍する荘内銀行において、女性も働きやすい職場環境づくりや今後女性行員へ期待することについて、人事企画グループ兼働きかた創造室佐々木紀子さんに聞いた。
「当行では、平成28年12月末現在で、課長以上の管理職のうち、20.3%を女性が担っています。女性支店長は79人中18名となっています。女性は遠慮がちになってしまうところがありますが、女性なりの感性を持ち、専門性を高め、女性の配属が少ない部署へも活躍の場を広げていけるよう、環境整備に努めたいと思います。」
◎キャリアを諦めず働き続けられる会社に
荘内銀行では、行員のワーク・ライフ・バランス推進として、それぞれの家庭環境に適う、多様な働き方ができるよう独自の制度を設けている。引き続き、佐藤室長、佐々木さんに話を聞いた。
「当行では育児休業、介護休業制度共に非正規の契約行員も取得できることとなっています。介護休業に関しては法律では93日まで取得可能ですが、当行では180日まで取得できます。また、育児休業については、女性ではほぼ100%の行員が1年間取得し、ほぼ全員が職場復帰しています。
1年間の休業により、銀行の状況に遅れをとったり内部の事務を忘れてしまったりしないか、不安を感じる人もいます。そのため、復職相談会を2年前から、産休前面談も1年前から実施しています。復職に係る不安や産前産後休業前の不安について相談を受けたり、休業中の過ごし方について話したりしています。これら相談会の実施により、休業中の行員の生活環境の把握も可能になりました。
また、保育料補助制度も設けています。就学前の子どもを持ち、配偶者がフルタイムで就労している行員について、保育料等を補助しています。直近1年間では約60名の行員が利用しています。
当行では、本店(鶴岡市)の近くに事業所内保育施設を設置していますが、利用者は本店近辺で働く者に限られてしまいます。そこで、他地域で働く行員への子育て支援策としてこの制度がつくられました。これにより、家計への負担を軽減しながら安心して働き続けることができると思います。」
さらに、荘内銀行では、行員の働き方の選択肢を拡大する目的で、再雇用優遇制度とライフチャレンジ制度を設けている。
「再雇用優遇制度は3年以上勤務した行員が、結婚や出産、育児、介護等のため退職し、退職後10年以内に再就職を希望する場合、優先的に再雇用する制度です。3年間で1名ずつ雇用しています。ライフチャレンジ制度は、育児や介護等を理由に、一定期間契約行員等を希望する者について、雇用契約を契約行員に変更できる制度です。復帰期限を設定しますので、一定期間経過後に行員に戻ることができます。例えば、子どもが3歳になるまでの間、契約行員として働き、その後行員に復帰するというものです。それぞれの家庭生活に合わせ、生活に重点をおき、働き続けられます。このように当行では、多様な働き方を選択できるよう、様々な就業継続支援制度を設けていますので、行員には、キャリアの存続をあきらめず、働き続けてほしいと思っています。」
◎女性活躍推進の3つ星「えるぼし」認定
荘内銀行は、平成28年4月「女性活躍推進法」に基づき厚生労働大臣が認定する優良企業として最上位である「えるぼし」を取得した。この認定は、県内第1号であり、最上位である3段階の認定としては東北初となる。女性のキャリア形成や女性管理職の登用など、女性が活躍できる環境整備に積極的に取り組む企業として社会的に高く評価された。「えるぼし」認定により会社にどのような影響があったか、佐藤室長に聞いた。
「長年、女性が活躍できる職場環境づくりに積極的に取り組んできましたので、もともと認定基準はクリアしていました。この認定を公にできることはたいへん意義のあることだと考えています。当行としてはこれまでの取組みが評価されることで、女性が働きやすい職場として、皆様に再認識される機会にもなっています。今年度の採用にも大きく影響がありました。学生さんは、就職活動にあたって、自分が働きやすい職場かどうかよく調べています。当行としても、キャリアを積むための様々な取組みを展開し、個人の夢を実現させる企業として今後も従業員が最大限に能力を発揮できる企業として広く発信していきたいと思っています。また、女性行員の意識も変わり、メディア等にも取り上げていただいたことにより、お客様からの評価も上がっていると感じています。そして、女性活躍は経営戦略としても企業経営に必要なものと考えています。」
◎子どもを安心して預けられる事業所内保育施設
荘内銀行では、平成22年から鶴岡市の本店近くに事業所内保育施設として「キッズワールドあゆみ」を設置している。その利用状況やメリットについて佐藤室長は、
「女性の就業継続を考えたとき、託児所の必要性がありました。『キッズワールドあゆみ』は、行員の他、グループ企業の社員も利用することができます。定員は20名で現在13名の子どもを預かっています。一般的に事業所内保育施設における保育士は、委託する場合が多いと思いますが、当行では、保育士6名を自社の職員として採用しています。そのため保育士も銀行の働き方を良く理解しているので行員が安心して預けられるという大きなメリットがあります。さらに、子どもの体調が悪い時など何かあれば速やかに情報を共有し、預けている行員も直ぐに駆けつけることができます。
『キッズワールドあゆみ』では一時保育や、孫を預けることも可能です。例えば、娘さんが里帰り出産する際に上の子どもを預けるという利用もあります。女性の活躍推進が進めば勤続年数も長くなり、孫も預かるというニーズは意義のある取り組みになっていくと思います。」と話す。
◎「荘銀かねやま絆の森」で地域活性化
荘内銀行では、地域貢献活動の一環として地域活性化を意識した森づくり活動「荘銀かねやま絆の森」を展開している。平成22年に締結されたやまがた絆の森協定の期間満了に伴い、新たに協定を締結し、平成26年の協定満了以降も継続している森づくり活動である。地元の小学生や保護者など、地域住民と一緒に森を育てる活動であり、平成27年4月から平成32年3月までの5年間の計画で進められている。下刈りやキノコの植菌の他、地元の食材を使った料理教室など、自然体験を通じて、行員と地域住民のコミュニケーションが図られ、地域とのつながりを一層深めている。
◎女性管理職として心掛けている働きやすい職場づくり
山形営業部次長早坂里奈さんは、平成28年4月より営業第二部に配属された。管理職としては2ヵ店目となる。
管理職として、働きやすい職場づくりのため、日ごろ心掛けていることを聞いた。
「働きやすい職場づくりを心掛け、部下に困っているような様子が見受けられれば、積極的に声を掛けるようにしています。特に、私も女性として、女性の気持ちはよく理解できますので、女性の部下が困っているようであれば、男性上司との橋渡しをすることも自分の役目だと感じています。小さい子どもをもつ行員が多くいますので、子どもの学校行事への参加や、子どもが急に具合が悪くなった場合など、小さい子どもを抱えているといろいろなことがありますが、そのようなときは、「半日休暇取ったらどう?」など、声を掛けるようにしています。小さい子どもがいるうちは、みんなで協力することが必要です。それが本人のためにもなりますし、ひいては会社のためにもなると思っています。また、働きやすい職場づくりとして、できるだけ残業を減らすようにしています。子どもの保育園の迎えの時間がある人など、家庭環境も共有し、配慮しながら接しています。」
早坂次長の働きかけにより、仕事への自信を得て、やりがいも感じられるようになったという部下からの声もあり、人望も厚い。早坂次長は、夫と小学生の長女、夫の両親、祖母との6人家族であり、自身の経験も活かされ、まさに女性のイクボスとして活躍している。営業第二部に配属される前には、イオン山形北店出張所で所長として活躍した。所長としての支店内の統率、管理、シフト運営などの経験が、今の仕事にも活かされているという。現在は本部の営業として、支店間の連携を図り、会社全体のレベルアップを図る役割。マネジメントに経験をもつ次長職として今後益々活躍が期待されている。
◎子育てしながら働き続けられる会社
齋藤奈美さんは入行8年目。昨年4月から県庁前支店得意先課に配属され、個人や団体を訪問して主に資産運用の提案をしている。夫と2人の子どもの4人家族。4年前に長女を出産し、2年前に長男を出産、2回育児休業を取得した。
「私も夫も実家が庄内地域にあり、近くに頼れる親族がいませんでしたのでお休みを頂いてしっかり子どもを育てたいと思っていました。職場のみなさんには『いつから育児休業取るの?』と気にかけてもらい、育児休業の取得は周りにも後押しされてのことでした。復帰後には子どもを保育園に預けようと考えていたので、入所手続きや準備が余裕を持ってできたのはとても良かったと思っています。 夫は協力的で普段から家事も育児も手伝ってくれています。お互い働いているので、家事や育児はやれる時にやれる方がやる、保育園の迎えは早く仕事が終わった方が行くなど2人で協力しています。職場の皆さんには理解いただき、働く中でたくさん支えていただいています。周囲には、子育てもしつつ、キャリアを積んできた先輩方がたくさんいて、子育てしながら働く私たちのサポーターとなってくださっているので、日々感謝しています。
また、当行はバックアップ体制が非常に充実していて、これから結婚して子どもを持つ人達も、周囲のサポートを受けながら働き続けることができると思っています。どんなに大変な時でも必ずだれかが手を差し伸べてくれるので、行員としても母としても妻としても、諦めず安心して働き続けてほしいと思います。」
◎育児休業の経験は職場にも活きてくる
入行7年目の進藤準一郎さんは現在、経営企画グループに所属している。経営企画グループは、銀行の経営戦略を担当する部署であり、経営会議の準備や連絡調整等の事務を担っている。
妻と1歳の長女、両親、祖母の6人家族で。平成27年9月に長女が生まれ、平成28年1月12日~1月22日まで育児休業を取得した。
「当初、育児休業を取ることは考えてもいませんでした。男性が育児休業を取るということはほとんど聞いたことがありませんでしたが、職場の上司や人事部から育児休業の取得について声を掛けてもらったことがきっかけとなり、取得することとなりました。育児休業は、自分の両親や祖母と同居するタイミングでした。同居の準備や、近所や親戚への挨拶回りなど行い、育児に関しては、何でもやったと思っています。今でも、子どものごはんや着替え、お風呂などは自分が行い、家族で協力しています。休業中に子どもと一緒に過ごしたことで、子どもの1日のリズムが分かるようになり、これまで育児をしてきた妻の大変さや、楽しみも分かりました。その後育児も率先してやるようになりました。今は、妻も働いていますので、日中子どもは母に預けています。家族の都合も考慮して早く帰らなければならない時は、定時で帰り、自分が子どもの世話をしています。
育児休業を取ったことで、家族に感謝されたのはもちろん、子どもを育てながら働くことの大変さが分かり、仕事においても周囲に配慮できるようになったと思います。休業して子どもと長い時間関われたことは、これまでの自分の考え方を変える機会となりました。その機会をいただけたことにはとても感謝しています。この体験を通じて感じた、働き方や育児に対する考え方は、今後も働く上で大事にしていきたいと思います。」
最後にこれから子どもをもつ後輩行員へアドバイスをいただいた。
「これから先、益々育児休業を必要とする人が出てくると思います。男性だからどうこうということではなく、誰でも相談できる職場の雰囲気であることが重要だと思いますし、自分は、育児休業の経験者として、育児休業を経験することの意義を後輩行員へ伝えていきたいと思っています。」