女性39名 男性55名(合計94名)
山形市農業協同組合(代表理事組合長 大山 敏弘)は、「JA山形市」の愛称で知られる山形県山形市のJA組織。営農販売事業とともに、経済事業、信用事業、共済事業、不動産事業、遺言信託代理店業務などを幅広く行っている。
また、社会貢献活動にも積極的で、平成26年8月に森林保全を目的とする山形県の「やまがた絆の森協定」を締結し、山形市小白川町ジャバプール近接の山林にて遊歩道整備などを実施している他、教育文化事業活動として、山形テルサでの特別協賛コンサートや青少年育成事業協賛など、さまざまな社会貢献活動に取り組んでいる。
◎「山形いきいき子育て応援企業」登録・認定について
優秀(ダイヤモンド)企業認定 平成29年3月31日
◎企業理念
当JAは協同組合の基本理念であります「一人は万人のために、万人は一人のために」の相互扶助の精神に基づ
き、「食と農を基軸として地域に根ざした協同組合」の確立と21世紀にふさわしい総合事業を展開しながら、健全で
健康な経営を目指し、組合員・利用者へお役に立てるようにひたむきに取り組み続けてまいります。
(「2017年ディスクロージャー」より 代表理事組合長 大山 敏弘)
◎ワーク・ライフ・バランス推進に向けた取組み
山形市農業協同組合(以下「同組合」と記載)でワーク・ライフ・バランス推進に取り組むこととなったきっかけは、労働組合から残業の解消を要望する声が約3年前にあがったことだ。その後、同組合では平成28年度に県が実施した「やまがたワーク・ライフ・バランス リーディングカンパニー育成事業」のコンサルティングモデル企業に選ばれたことを機に残業の解消と業務の効率化を図るため、『WLB(ワラバ)推進会議』を組織内に設立した。
同組合でワーク・ライフ・バランスを積極的に推し進める、常務理事の佐藤安裕さんにお話をお聞きした。
「職員はみな、家庭を抱えながら仕事に取り組んでいます。時には、それぞれの家庭の事情によって今まで通り仕事を続けることが困難となり、仕事を辞めたいと職員から相談を受けることもあります。ただ、私は、せっかく今まで仕事を続けてきて積み上げてきたものがあるのに、育児等を理由に仕事を辞めてしまうのは勿体ないと思うんです。子育てのために仕事が充分にできないのは、わずかな期間ですので、その期間は短時間勤務制度を活用するなど工夫をして、仕事と家庭をうまく両立して欲しいですし、そのために必要な制度は整備したいと思っています。実は、自分自身が仕事中心の生活を送ったことで全く子育てには関われず、仕事と家庭の両立をできていなかったこともあり、当組合の職員には自分と同じ轍(わだち)を踏ませたくないという気持ちもあります。」
◎WLB(ワラバ)推進会議とコンサルティングモデル事業から生まれたもの
WLB(ワラバ)推進会議は、労働組合と各部・各支店の課長、次長で構成され、各部署の職員からの要望や現状を踏まえて働きやすい職場環境づくりに取り組んでおり、特に、昨年度は同会議のメンバーを中心に、県のコンサル
ティングモデル事業を活用しながら、課題解決に向け複数の取組みを行った。
昨年度、まず実施したのは、「理想の姿」を広報すること。「WLBの推進で、笑顔が集まる職場を創造する!」というキャッチフレーズとともに、職員一人ひとりが「ワークとライフの目標」を掲げた写真をポスターにして、職場内外に掲示した。
また、時間にメリハリをつけるため、「毎週水・金曜日は早帰りデー」と「毎日17時に終礼及び留守電セットを実施」の2つを実施した。この取組みに対し、職員の評価は約7割近くが「満足」、約9割近くが「このまま」もしくは「改善したうえでの継続」を希望する結果となった。
併せて、昨年度は、家族などでクリスマス行事ができるように、12月22日を全員が定時で帰宅する「完全退勤の日」とした。このような完全退勤イベントを通し、それぞれの家庭を尊重した職場の雰囲気づくりも行った。
今年度は、昨年度の取組みに続き、業務の改革に取り組むための協議が始まっている。
◎産休、育休、短時間勤務制度を活用しながらキャリアアップ
同組合では、子育てしながら働ける環境が徐々に整い、継続してキャリアアップを図ることが、さらにしやすい環境になったことで、現在、課長以上の管理職のうち女性が15%以上を占めている。
その中で、内部監査室の室長を務める佐藤奈都子さんは、「育児短時間勤務制度」を活用し、通常よりも1時間遅く出勤することで、4歳になる子どもの子育てと仕事を両立している。
「夫は教職に就いており、部活の顧問もしているため時間に余裕がなく、その分実家の母親に育児をサポートしてもらいながら仕事を続けていました。営業店にいた頃は、帰宅時間が遅くならないように周囲の人が配慮してくれていましたが、それでも夜9時、10時を過ぎることもありました。
子どもの成長につれて子育ても段々と手がかかるようになり、実家への負担も大きくなってきたため、退職を上司に相談すると、『辞めるのではなく、どうやったら働けるかを、一緒に考えよう』と言ってくれたんです。その後、経営者側で今年の3月に短時間勤務制度を就学前まで取得できるように改正して下さり、その活用をすすめられ、今の働き方ができるようになりました。今は、通常よりも1時間遅く出勤でき、さらにほぼ定時で帰ることができるので、時間に余裕をもちながら仕事も家事もできるようになっています。」
採用されてから18年目となる佐藤さんは、本・支店で貯金・貸出金や共済の営業を経て7年前に支店長代理職となり、その後、次長職を経て今年度から内部監査室の室長に就任した。
新たに覚えることも多く、内部監査士の資格をとるための勉強も始めている。今後は、子育てに関わる時間をしっかりとりながら、業務を全うすることを目標にしていると言う。
「私は、出世欲は全くないのですが、産休、育休や短時間勤務を使いながらでも自分の仕事が認められて昇格できるというのは嬉しいですね。仕事と家庭の両立で悩んだ時期もありましたが、相談しやすい上司がいたので、辞めずに済んだのだと思います。最近は、当組合も若い女性職員が増えていますので、同じように仕事と家庭の両立で悩んだ時は、誰かに相談してほしいと思います。」
◎育児短時間勤務制度で子どもとの時間を確保
育児短時間勤務制度の就学前までの改正で、仕事を続けることができたという職員がもう一人。
金融部信用課の関幸枝さんは、小学1年生の男の子と、保育園年少の女の子の二児の母。関さんの夫も、家事や育児には協力的ではあったが、仕事柄、朝は早くに家を出て、夜は関さんと同程度の時刻に帰宅する生活スタイルであったため、子どもの保育園への送迎などは実家の母親に頼らざるを得ない状況だった。
一時期、母親が入院したこともあり、長男の入学を前に退職を考えたが、上司に相談したところ今年の3月より「育児短時間勤務制度」の改正をする予定であるから、それを利用することをすすめられた。家族とも相談し、出勤と退勤の時刻を30分ずつ短縮する形で仕事を継続できることとなった。
「短時間勤務を利用する前の朝はいつも慌ただしくて『急げ!』という感じでしたが、通常よりも30分遅いだけで、時間にも気持ちにも余裕ができました。今は私が保育園の送り迎えをすることができるので、子どもと接する時間が増えて凄く嬉しいです。」
短時間勤務制度を活用するようになり、仕事上で特に気を付けるようになったのは、効率よく仕事をすること。以前は今までと同じやり方でしていた仕事も、働く時間が短くなってもしっかり仕事をこなしたいという思いから、「この仕事を早くするためにはどうしたらよいか」ということを、よく考えるようになったという。
「育休を申請した時と、今回と、仕事を『辞めなきゃいけないかな』と思ったことが2回あったのですが、どちらも辞めずに済んで、本当に助かりました。ワーク・ライフ・バランスや仕事の効率化について、WLB(ワラバ)推進会議を中心にみんなで話し合う機会があり、子育てをしている身としてはすごく嬉しく思いますし、『早く帰れな』と上司が声をかけてくれるのも助かります。これから結婚、出産する方も、一人で悩まないで上司や周りの人に相談して、どんどん出産や育児を経験してほしいと思います。」
◎さらなる改善をめざして
山形市農業協同組合の働きやすい職場環境づくりは、まだ終わらない。山形県の「山形いきいき子育て応援企業」に優秀(ダイヤモンド)企業として認定され、「やまがた企業イクボス同盟」にも名を連ね、更に結婚を支援する「やまがた出会いサポートセンター」にも参加。また、地域の子育て支援として「やまがた子育て応援パスポート」協賛店に加入しアパート仲介料の5%割引を実施している。
「昔は家事や育児を父親がするという概念は薄かったですが、今は違います。まず、上司の世代である私たちが、自分たちのこれまでの概念を変えていかなければいけません。
『世話焼き』だと周囲からもよく言われますが、組合員・利用者へ良質なサービスを継続提供していくためには、職員の心身の健康を確保することが大切です。今後も、健全で健康な経営をするためにできることから取り組んでいきます。」(常務理事 佐藤安裕さん)