管理職:女性2名 男性5名(合計7名)役職者:女性4名 男性6名(合計10名)職員:女性148名 男性76名(合計224名)
社会福祉法人敬寿会は、平成6年に発足し、特別養護老人ホームを中心に山形をはじめ宮城、埼玉、東京、神奈川に11拠点73事業所を展開。取材場所であった沼木敬寿園では入居者の個性を尊重し、生活の場を自宅から移して利用する「地域密着型介護老人福祉施設入所者生活(特養)」と「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」、自宅から通いや泊まり等によって利用する「小規模多機能型居宅介護事務所」と「短期入所生活介護事業所(ショートステイ)」のサービスを提供している。
◎「山形いきいき子育て応援企業」登録・認定について
優秀(ダイヤモンド)企業認定 平成30年1月
◎企業理念
【 法人の基本理念 】
1 プライバシーの保護
2 自主性の尊重
3 自立支援
4 個別援助計画に基づく生活支援・介護介助
【 法人の経営基本方針(概略) 】
1 法令を遵守し、行政の求める法人の役割を果たします。
2 山形の高齢者を敬い大切にする心を全国に伝えます。
3 地域とつながり、社会貢献を果たします。
4 優良な施設で、職員一人一人が輝く職場を実現します。
5 安定したサービスの提供のため、健全で透明度の高い経営を実現します。
敬寿会の経営基本方針のうち、特に大事にしているのが2,3,4です。地域のための福祉施設ですから、地域の方々によく知ってもらうことが大切。夏祭りや講座、サロンを開催して地域に開かれた施設を目指しています。(理事長 金澤 壽香さん)
◎今後の展望
入居者の方々にしっかりしたケアをする職員がいて、初めて成り立つ職種ですから、基本方針にもあるように、職員一人一人が輝く施設にすることが目標です。職員だけでなく、その仕事を支えてくれているご家族も同様です。施設で働く人、入居する人が幸せになり、職員が定年まで仕事をしてもらえるような運営をしていきたいと思っています。
◎「山形の助け合いの心」で高齢者福祉を
敬寿会は、平成7年に施設第1号となる「敬寿園」を山形市妙見寺へ開設し、その後順調に施設を増やしながら東京、宮城、神奈川、埼玉へ事業を拡大。現在は73事業所を運営している。
事業は特養、ケアハウス、ショートステイ、グループホーム等のさまざまな形態で高齢者福祉を支える。全施設を合わせた職員数は常勤・非常勤を合わせると740人を超え、半数以上が女性だ。
「私自身、介護士という言葉のない時代から寮母として介護に関わり、施設運営については何も知らないところから始めました。創設者の亡夫が『家庭の延長線上としての施設を作りたい』という考えでしたので、それを目指してやってきたんです」と、理事長の金澤壽香さん。子育てをしながら敬寿会に従事し、今は義母、息子夫婦、孫二人と共に暮らしている。家族や地域の絆を大切にしながら営む金澤さんの「山形の助け合いの心を全国に広めたい」という想いは、家庭のようなあたたかな空間づくりと職員間の助け合いの心として、敬寿会に根付いている。
◎地域に開かれた施設運営 ~沼木敬寿園の取組み~
山形市沼木にある特別養護老人ホーム「沼木敬寿園」では、入居者の受け入れだけでなく、地域との交流が盛んに行われている。
「1階の地域交流ホールで定期的に開催している『いきいき100歳体操』を取り入れたサロンは、回数を重ねるごとに地域の方々の参加者が増え、今では多くの方が毎回足を運んでくれるようになりました。」と話すのは、施設長の金澤忠次さん。施設利用者との交流の時間にもなり、地域住民による施設への理解も深まる機会になったという。
年1回開催される「夏まつり」は、利用者やその家族のほかに、地域住民にも参加を呼び掛け、子どもから大人まで楽しめるイベントだ。山形市の花火大会の際には、屋上を開放して地域の人たちに喜ばれている。また、地域住民と職員の健康に配慮し、「健康づくりノート」を活用した取組みや健康づくり講座の開催などを実施し、「平成29年度やまがた健康づくり大賞 企業部門」として顕彰された。利用者とその家族など、限定的な人との関わりだけになりがちな福祉施設だが、地域の人たちに積極的に働きかけ、オープンな交流の中で人と人とがつながることができるのが、沼木敬寿園の大きな魅力になっている。
◎正職員転換や管理職登用は職員の希望を優先
施設を「山形の家庭の延長線上」と表現する敬寿会の理念は職員間にも浸透し、職員にやさしい制度や環境が、おのずと構築されてきた。理事長の金澤さんが掲げる目標は「日本一職員が輝く施設」だ。職員にはその家族も含まれ、もちろん施設の利用者も同じという。
現在、契約職員と正職員の違いは、給与面では差がなく、雇用期間に期限があるかないかの違い程度。定期的におこなう個人面談で本人の希望を聞き、正職員転換などの希望があれば、面談を経て転換、登用をしているという。平成29年度でパートタイム職員から契約職員への転換は2名、契約職員から正職員への転換は18名にも及ぶ。
管理職についても同様で、実力があり、本人の希望や同意があれば男女関係なく職務を任せている。
「職員に求めるものは、『仕事への責任』と『モチベーション』であり、そこに性別は関係ないんです」
◎一般職から管理職の登用を開始
沼木敬寿園の業務課長を務めるのは、平成24年に入職した樋口和子さん。小規模多機能型居宅介護事業所「沼木敬寿園」の開設2年目から管理者として従事し、全体を見渡しながら日常の業務と管理面を担ってきた。平成29年4月に業務課長となり、ひとつの事業所だけでなく施設全体に目を配る仕事になったと言う。
「全体を見渡す分、視野が広がり、地域との関わりを試行錯誤しながら成果を上げられることにもやりがいを感じますね。長く現場にいたので、現場の声をしっかり聴きながら、話しやすい雰囲気を作るように努めています。これからも一般職から管理職になる人が増えるよう、働き方も工夫していきたいと思います。」
ケアハウスの看護師として平成15年に入職した松田奈津子さんは、ケアマネジャーの資格取得や課長業務代理の役職を経て、今年4月に山形敬寿園の業務課長に就任した。
「現場にいる時は見えなかった、法人の経営や労務など、私で務まるのかなという不安もありますが、現場との橋渡し役になれるよう模索しながら勉強中です。現場も楽しくやりがいがありますが、また違う魅力があり、自分の幅が広がるような気がします。敬寿会には若い職員が多いので、今までと違うことにチャレンジしてキャリアアップを目指してほしいですね。」
◎10年以上前から「短時間勤務制度」を導入
職員の7割を女性が占めていることもあり、敬寿会では女性が働きやすいように、開設当初からニーズに合わせて制度に手を加えてきた。産休・育休はもちろん、1日の勤務時間を2時間短縮する「短時間勤務制度」は、10年以上前から実施していたという。24時間体制で夜勤が不可欠な職場だが、深夜勤務を制限する「深夜勤務制限制度」の利用も可能だ。シフトを組むのは休みの希望を聞いてから。子育て中だったり、家族にお年寄りがいたり、という家庭の事情も「お互い様」と考慮しながら、できるだけ無理のない勤務シフトを立てる。
「今のような制度や体制になったのは、いわば自然発生のような感じです。職員の希望に合わせて、いいと思うことは率先して取り入れてきました」(理事長 金澤 壽香さん)
産休や育休を取得する人は、全施設で毎年30人にも及び、子育て期は時短勤務などを活用する。この流れが浸透しているため、育休後に復帰する職員や、子どもを3人以上育てている職員も多い。育休中に赤ちゃんを抱いて施設に遊びに来る職員もいるほどだ。
「女性も男性も、子育てしながらの仕事が大変だということはわかるので、自然に受け入れられています。それは、常日頃のコミュニケーションがあるからかもしれません。独身の職員も、それを間近で見ているので、そういうものだと理解していると思います。大切なのは、職員一人一人が自分の人生設計をして、仕事だけでなく自分の人生そのものを楽しむということ。それが利用者の方々との交流に活きることもあるんです。」
◎妊娠から子育て期まで安心できる職場
現在、沼木敬寿園に勤務し勤続15年を迎えるベテラン介護士平吹咲子さん(介護福祉士)。専門学校を卒業後、新卒採用で敬寿会に入職し、結婚、出産を経て勤務を続けている。
「お年寄りと接して、逆に元気をもらっています。初めて接する利用者さんと何度かやりとりをする中で『この人はこうなんだ』と理解できた時、分かり合えた時がとても嬉しいですね。私にとって、利用者さんも職員同士も家族みたいに近い存在です。将来は、ケアマネジャーの資格を取得するのが目標です」
平吹さんは、現在4人家族で、6歳と4歳の男の子を育てている。長男の出産時は妊娠中から安静が必要だったため、出産の約半年前から休み始め、その後育児休業を1年間取得した。復帰後は生活のペースと体調を考慮して「深夜勤務制限制度」を活用し、夜勤のシフトから外れて勤務ができたという。また、「育児短時間勤務制度」によって前後1時間の勤務時間短縮も活用している。
「妊娠がわかった時から、夜勤シフトや体力が必要な仕事はしないようにと、私よりも周囲の職員の方が気を遣ってくれました。2人目出産の時は他の職員の出産もあったので躊躇したのですが、上司から勧められて安心して休業申請を出しました。今も、シフトなどの希望を聞いてくれるので助かっています。子育ては、経験しないとわからないことばかりなので、これから妊娠や出産を迎える人には『今、こういう状況だから助けてほしいと声に出して言おう!』と言いたいです」