この度は、荒川さんに日々のお仕事や全国アビリンピックに向けて取り組んだことについてお話を伺いました。
鶴岡高等養護学校の先生から、地元企業へのインターンシップで山形航空電子株式会社を紹介され、実際に研修を受けました。その時、社員の方が優しく指導してくれたり、物を置く場所がきちんと決められたりしていて、良い会社だなと思い入社しました。
梱包する段ボール・緩衝材の製作や配膳を行っています。
また梱包に使用する袋、テープ、エアークッション、現品票なども在庫確認を行い、使用した分をパソコンに入力して要求する作業や、保管と整理を行っています。
段ボールを組み立てる時にリズム良く作れたり、丁寧に早く出来ると楽しいなと感じます。入社して4年ほど経ちましたが、1年目の時は今の半分もできませんでした。ですが、段ボールの中に入れる緩衝材も、今では動きながら作れるようになりました。自分でも動きが良くなっているなと感じます。
今日やるべき仕事に優先順位をつけることが難しいです。どの仕事を先にやるべきかというところがまだ出来ていないので、チームリーダーに相談しながら少しずつ良くしていって、仕事に活かしていきたいです。
友達と映画を見に行ったり、買い物・ドライブをしたり、美味しいものを食べに行ったりしてリフレッシュしています。
あと、休みの日はよくサッカーの観戦にも行きます。会社の先輩に連れて行ってもらってからサッカーが好きになり、一人でも行くようになりました。
平成26年に、アビリンピックの選手を探していた社会福祉法人山形県社会福祉事業団のアビリンピック選手育成推進員の方から会社に県大会出場の話をいただき、私もやる気があったので『やってみるか』と思って県大会に出場しましたが、その時は全然思うように出来ませんでした。でも、『自分でも綺麗に製品パッキング出来るんだな』と思って面白かったので、その翌年の平成27年の県大会も出場したところ、優秀賞を受賞することが出来ました。それがきっかけで、その翌年の平成28年の県大会にも出場し優秀賞を受賞することができ、全国アビリンピックに出場しました。
就業時間内に1時間くらい時間を貰っていました。大会が近付いてきたら毎日、直前になったら半日くらい時間を貰って練習をしました。会社にはとても感謝しています。
箱を折る時に皺が出来るとモチベーションが下がったりしていました。また、疲れてくると皺が出来ることがわかったので、気持ちを引き締めることも大事ですが、肩の力を抜きながら作るということも大事なんだなと気付きました。
昨年の大会から課題が変わり、一から覚えるのが大変でした。上司と相談しながらの練習でしたが、「スピードも大事だけど、作ったものを置く場所を決めることも大事。製品パッキングは速さはもちろんだけど、丁寧さや見た目を大事にするから。」と教えていただいたので、そこを注意して練習しました。
たくさんの方が見に来ていたので、最初は手が震えるくらい緊張しました。でも、やっていくうちに慣れたので、何とか自分の力を出すことが出来ました。
【大会中の様子】
課題に取り組む荒川さん
自分のグループは同じくらいのスピードの人達でしたが、他のグループの方はとても速かったです。中には自分のタイムより2、3分早い人もいたので、どうなるんだろうと思いましたが、金賞で呼ばれた時は嬉しくてガッツポーズしました。
全国大会で金賞を取ったんだから、これまで以上に仕事をちゃんとしていこうと思いました。悪いところを少しずつ直し、数をこなせるよう成長していかなくては、と感じました。
ダンボール作りもそうですが、材料の発注もしているので、きちんと使う分だけ発注できるようにしたいです。余ったり足りなくなったりしないように発注するには、他との情報共有だけでなく、これまでの受注の変動も見ていないといけません。ですので、そういう技術をアップさせていきたいと思います。
◆大会の名称◆
大会の正式な名称は「全国障害者技能競技大会」ですが、親しみやすいものとするため、愛称として「アビリンピック」を使っています。
「アビリンピック」(ABILYMPICS)は、「アビリティ」(ABILITY・能力)と「オリンピック」(OLYMPICS)を合わせたものです。
◆目的◆
アビリンピックは、障害のある方々が、日頃培った技能を互いに競い合うことにより、その職業能力の向上を図るとともに、企業や社会一般の人々に障害のある方々に対する理解と認識を深めてもらい、その雇用の促進を図ることを目的として開催しています。
◆荒川さんが出場された「製品パッキング」種目について◆
●課題
・競技課題1 緩衝材の組立・結束【25セット(5束)/30分】
・競技課題2 小箱・中箱・化粧箱・外箱の組立・セットアップ梱包【4梱包(4箱)/60分】
●審査ポイント
・規定された数量を時間内で作成できたか
・製品の向きは正しいか
・正しく結束されているか
・外観にシワ・ヤブレ・汚れ・凹みなどが無いか 等
製品パッキングは、製品を作るスピードと、傷や汚れが無いように仕上げる丁寧さの両方を求められる競技種目です。荒川さんが金賞を受賞した平成28年の全国アビリンピックにおいて、2つの課題で規定された数量を完成できたのは、参加選手19名のうち6名でした。それだけ難易度の高い課題といえます。品質の良い製品を効率良く作成するためには、徹底してムダをとり、いかに正味作業である「折る」作業の割合を増やすことができるかと共に、それを踏まえた作業形態が求められます。
当初は、なかなか思い通りには行かず、悔しい思いをしていましたが、動作分析などを行い、色々な人からのアドバイスを頂きながら着実に課題を解決して、自分のものにしてきました。全国大会前には、スピード、動作の正確さ、仕上がりともに充分に全国大会で通用するレベルと思わせるまでになっていました。
アビリンピックへの挑戦は、工夫を凝らして改善を進める「業務スキルの向上」はもちろんのこと、あきらめず最後までやり切ること、周りの協力に対する感謝、成果が自信につながることなど、人間的にもおおいに成長しました。
荒川さんは、礼儀やあいさつも素晴らしく、常に向上心を持って前向きに仕事に打ち込んでいます。障害のない社員の士気向上や、社員の一体感の醸成にもつながったと感じています。現在は同じ障害を持っている後輩の良き手本となり、指導も行い、今後の活躍も大いに期待するところです。