この度は、川田さんに技能五輪全国大会に向けて取り組んだことや日々のお仕事についてお話を伺いました。
高校生の時、やりたいことが見つからなくて、とりあえず専門学校に行って資格だけでも取っておこうかなと最初は思っていました。私の父も理容師なのですが、父だけでなく母と祖母も理容師なんです。だからやっぱりこれしかないのかなと思う部分もありました。でも今は、理容師の道も悪くないと思っています。
今は慣れましたが、仕事終わりの練習が少し大変です。0時近くになることもありますし、朝も早いので、そこが少し大変と感じるところです。
ゲームをしたり、漫画本を読んだりします。昔のゲームとかも好きで、お店に行って昔のものを探したりしてる時が一番楽しいですね。
他のお店で働いている先輩が技能五輪全国大会に出場し、昨年、一昨年とも2位という成績を収められました。私も影響を受けて去年、千葉県で開催された技能五輪全国大会に出場しましたが、8位という自分でも思うような結果が出せませんでした。自分なりに頑張ったのですが、やっぱり悔しい気持ちがあり、『今年も出なきゃいけない』と思って出場を決めました。
大会は大事ですが、仕事の方ももちろん大事なので、仕事終わりに練習していました。大会2ヶ月前あたりからはほぼ休みなく、1ヶ月前あたりからは日曜日とか夜にも練習していました。
始まる前は不安と緊張で大変でした。でも、昨年出場して、時間ギリギリで仕上げなければいけないことや流れなどがある程度わかっていたので、出だしも悪くなかったと思います。当日の朝も予行練習が出来たので、上手く出来なかったところを本番で気を付けるようにしました。やっぱり地元開催というのは大きなポイントでした。
会場が寒かったことと、水がとても冷たかったことです。他の出場者の皆さんもですが、動きやすくなるようにずっと手を動かしてました。
もう一点は、髪の毛の色を染める時です。ドライヤーで温める工程があるのですが、一番最後の競技の時に煙が出てきました。結果的には大丈夫だったのですが、髪の毛が燃えてたら大変だと思ってヒヤッとしました。
私はありませんでしたが、ハサミで手を切ってしまう方もいたようです。髪の毛を指で挟んで切るのですが、集中すると意外と指の方を見ていなくて、それで切ってしまうんです。また、制限時間内に終わらないと、そこで完成品として評価されてしまうので、時間の使い方も難しいところだと思います。
◆川田さんの作品◆
表彰式では、周りも見えないくらい緊張しました。後々、『重たいな』としみじみ感じました。メダルは山形の鋳物で出来ていて、漆と金箔が塗ってあります。月山と最上川、さくらんぼ、という馴染みのものがデザインされていたので、なおさら嬉しかったです。
お客様や友達から、「新聞見たよ」と声をかけてもらいました。テレビでも取り上げてもらいましたが、それに対しても「見たよ」と言ってくれました。たくさんの方が応援してくれて、また、今回の金賞受賞についても喜んでくれました。
どこのお店でもそうだと思いますが、理容業界は人手が不足しています。昔、テレビでも“カリスマ美容師”という言葉で取り上げられたことで、美容師さんの方が格好良く見えるのかもしれません。でも今回、私が金賞をいただいたことで、理容師を目指している方達にPR出来たと思います。これからの人手不足の解消に繋がれば嬉しいです。
今の時代、手に職をつけるというのはとても良いことだと思います。髪の毛は伸びるので、その分切りに来る人がいます。最初は大変だと思いますが、経験を積んでいくにつれて、だんだん『悪くないな』と間違いなく感じるようになるので、そういった点はとても良い職業だと思います。
来年から理容業界の方の大会に出ることになると思います。技能五輪と違って年齢制限もなく、実際にモデルさんを相手にした大会になります。出場者の中には、今まで教えてくださった先生レベルの方がたくさんいらっしゃいますし、人数の規模も大きくなりますが、その中で結果を出していけるようにしたいです。