女性47名 男性443名(合計490名)
半導体デバイスをコア事業としてグローバルに事業を展開しているサンケン電気㈱の半導体チップ(ダイオードチップ、トランジスタチップ、MOSFETチップ、ICチップ、IGBTチップ)生産拠点として、1981年に設立された山形サンケン㈱(代表取締役社長 長谷修敬)。山形県の恵まれた環境の中で、パワーエレクトロニクスを通じて貢献していく企業を目指している。
◎平成29年度「やまがた企業イクボス同盟」加盟
◎「山形いきいき子育て応援企業」登録・認定について
優秀(ダイヤモンド)企業認定 平成30年9月
◎企業理念
『Innovation~未来への変革~』
常に技術力と創造力の革新に努めながら品質の確かさを追及する。さらにお客様のために、そして社員一人ひとりがこの会社で働くことを誇りに思える企業として、また社会のイノベーションのために、パワーエレクトロニクスを通じて貢献していく企業を目指し、力強く前進しながら山形を拠点に成長し続ける。
◎「働き方改革推進本部」発足メンバーとして男女ともに働きやすい職場環境作りに取り組む
2018年4月から、サンケン電気(株)本社に「働き方改革推進本部マネージャー」として出向し、重要な業務を担っている今野香代子さん。現在、本社のある埼玉県に単身で赴任している。山形サンケン㈱に入社した当時のことを尋ねると、「入社したのは34年前。短大時代に秘書業務の勉強をしていたこともあり、最初は総務部に配属になりました。その後、製造部で生産管理や最終工程の検査を担当しましたが、当時は女性が複数の部署に配属になるというのは珍しかったかもしれません」と振り返る。今野さんは部署の係長職を経て3年前に、製造部検査課の課長代理に抜擢され、山形サンケン㈱で初めての女性管理職となる。「管理職になる前に、工程移管メンバーとして関連会社である福島サンケン(株)へ1年間出向したことがあります。初めての単身赴任だったので、当時のほうが夫や高校生の子ども達の理解が必要だったかもしれません。その時の経験があったため、管理職になることを相談したときの家族の反応は『あ、そうなの』って感じで(笑)」。
本社で「働き方改革推進本部」を立ち上げるとの話が出たのが1年前。発足メンバーとして現在の職務に就いた今野さん。
「人材育成制度の見直しやITを取り入れた業務の改善など、「Happy Cycle」というビジョンのもと、全社員の潜在的な可能性を最大限引き出すために日々取り組んでいます。そのために重要なのは社員一人ひとりの意識改革です。一からつくりあげる仕事なので、日々やりがいを感じています」。
長谷修敬社長は「サンケン電気本社では、社長自ら働き方改革に取り組んでいます。『働き方改革推進本部』立ち上げの一期生として今野が加わることで、当社の女性社員たちのキャリアアップにつながればという考えがあります」と話す。女性のキャリアアップを目指し、育成に力を注ぐ同社。日本において確実に労働人口が減っていく中で、女性の活躍の場をつくることが今後さらに必要になってくる。
◎女性社員の3/4が既婚者で、平均勤続年数が22.8年と長いのも働きやすさの証
「我が家は三世代同居なので、早朝の打ち合わせがあったりすると、義母が家族の食事を作ってくれたり、家族にはすごく助けられています。家事や料理も夫のほうが上手かもしれません(笑)。仕事面でも、様々な部署での業務を経験しながらやりたいことをやらせてもらっている気がしています。そのことは自分の励みになっています」。現在、役職に就く女性は3人。「できない理由を考えるよりは、まずやってみること。挑戦することはすごく大事なことだと思います。失敗しても、周りの人達が助けてくれる、当社はそんな会社ですから」と今野さんは後輩たちにエールを送る。
「ワークライフバランスについては会社と家庭両方の協力が必要です。今後、特に必要となってくるのは周りのサポート。上司や現役の管理者の理解が重要になってきます。今野は女性の管理職なので、働く女性の気持ちを理解しながら会社を変えていく担い手になってくれるものと期待しているところです」と長谷社長。
女性社員の3/4は既婚者で、平均勤続年数が22.8年と長いのも、働きやすい企業の証とも言える。「私は育休取得の第一号です。その時生まれた子どもたちも成人しましたが、今でもこうして長く勤めています。特別な事情がない限り、出産を理由に退職される社員はいませんね」と話すのは、製造部検査課でグループリーダーを務める久保幸江さん。社内のサポート体制が整っていることから有給休暇取得率も63.6%と高い(平成29年度)。
◎男女関係なく、利用しやすい制度の導入
ワークライフバランスについて積極的に取り組んでいる同社では、育児休業制度を活用して休みを取得した男性社員もいる。入社してから22年、品質技術部品質保証課で顧客の対応や品質の向上に携わる黒坂豊広さんだ。男性社員として初めての取得者になる。
「共働きしている妻が、産後に仕事復帰する日までの7日間、上司の薦めもあり、育休を取りました。その間、子どもを預ける準備や、生活リズムを復帰後にシフトできるように準備していました。妻も当社の社員なので、会社や仕事に対する理解があります。初めての子どもだったので不安なことも多々あったのですが、物理的にも気持ちの上でも準備する時間を持てたことは良かったですね」と話す、黒坂さん。同社では仕事復帰後も希望があれば、育児・介護休業法で定める始業・終業時刻の繰り上げ、繰り下げ制度を導入している。
◎多彩な休暇制度を活用
時間単位で取得できる「サポート休暇」を利用して地域との関わりを大切にする社員も多い。
社員の95%が地元出身の地元密着型企業。東根市で開催される「さくらんぼマラソン」などのイベントボランティアに参加するなど、一人ひとりが地域活動に関わっている。
もう一つ「リフレッシュ休暇」についても、総務部で人事を担当する奥山宙さんに聞いてみた。「社員が40歳になったときに2日間、50歳のときには3日間のリフレッシュ休暇を導入しています。自由にプランを立てて旅行ができるように、旅行会社で使用できる金券をプレゼントしたり、また誕生月のプレゼントも全員に用意します」。
◎インターンシップで企業への理解を深める
「当社では、2年前から積極的にインターンシップを受け入れています。どんな会社なのかを知っていただくために、学校のスケジュールに合わせて2~5日間職場体験していただいています。インターンシップ以外にも、社員の中学生以上の家族を対象に、年に一度、職場体験会を実施しています。家族にも職場の雰囲気を味わってもらう、仕事の内容を知ってもらうことを目的に行っており、毎回好評を得ています」。(奥山さん)
◎女性の力が会社の運営に左右する
「経営目線からすると、製造を維持する中で労働人口が確実に減っています。女性の力がないと会社の運営を維持できないと思っています。経営者側は、そのことについてどれだけ危機感を持っているかどうか。国の政策や自治体の取り組み(イクボスなど)の中でサポートも受けながら進めていきたいと思っています。最近では、採用の時点で、働きやすさに対する企業の取り組みについて気にする学生も増えてきており、会社を選ぶ基準にもなっています」(長谷社長)
「女性の活躍=役職につくだけじゃないと思っています。男女問わず、リーダーシップを持って自分の考えを伝えられる人が増えるといいと思います。そうすれば、社内においても活気が出てくるのではないでしょうか?」(今野さん)
◎働き方改革を進めるために必要な行政からのサポート
総務部部長の柏倉敬一さんに、企業が働き方改革を進めていくうえで、今後必要だと思うサポートについて聞いた。「これからのことを考えると介護負担が大きくなると思います。女性が働きやすい環境をつくっていくためには、介護に対する行政支援が必要です」
「特に女性を推進していく中で感じるのは、男性と女性の思考が違うということ。それぞれの特性を理解したうえでワークライフバランスを考えていくことが必要だと思います」と、長谷社長も今後を見据える。
「山形いきいき子育て応援企業優秀(ダイヤモンド)企業」として、女性や若手が活躍できる職場をつくり、次世代の人材育成を行っている山形サンケン(株)。地元に根差しながら、男女ともに働きやすい企業として、これからも山形から発信し続ける。