■ミドリオートレザー株式会社 女性 18名 男性135名(合計153名)
■北洋加工株式会社 女性 68名 男性134名(合計202名) 合計355名
※ミドリオートレザーグループ一体として業務を遂行
◎「山形いきいき子育て応援企業」認定について
優秀(ダイヤモンド企業)認定 平成27年3月
◎経営理念
ミドリ安全企業グループは、「安全・健康・快適職場への奉仕」を社是とし、いつの時代でも働く人々の安全と健康を守り、快適職場を創造することをとおして、明るく心豊かな社会づくりに貢献することを使命とする。
※経営理念は、ミドリ安全株式会社グループ企業全て統一となっている。
◎ミドリオートレザー株式会社の企業コンセプト
「天然資源を科学する」
◎社名を新たに、世界進出の第一歩
山形自動車道を山形市から寒河江市へと走り抜ける途中に見える大きな工場。今回お伺いしたのは『ミドリオートレザー株式会社』。社員数355名、派遣社員を含めると約600名の人がこの工場で働いている。昨年11月に、これまでの『ミドリホクヨー株式会社』から『ミドリオートレザー株式会社』に社名を変更し、日本のみならず世界進出を目指す企業である。創業は1945年3月、山形市長谷堂に『北洋皮革工業株式会社』を設立し、タンニン鞣(なめし※天然皮を製品として扱うことができるようにタンニンを用いて加工したもの)を主とする靴底メーカーとしてスタートした。時代の変化とともに、技術革新を行いながら社屋の移転や他企業との業務提供などを経て、現在は東京に本社を構える『ミドリ安全株式会社』のグループ企業、皮革鞣製部門として稼働している。
◎日本が誇る「メイド・イン・ヤマガタ」
「弊社は、約90%が国内メーカーの自動車用高級本革シートの本革素材を製造している会社です。さらに、オフィスや一般用の家具、鞄(ランドセル)の素材、最近では皮から抽出した生コラーゲンを化粧品として製造し、販売を行っています」と語る常務取締役 工場長の斎藤さん。人類の歴史と共にあった本革を中心に、食品や医薬品、化粧品に欠かせない天然コラーゲンにいたるまで、生み出される根底にはまさに「天然素材を科学する」という企業コンセプトが貫かれている。国内では業界トップシェアを誇る同社だが「昨年、ミドリオートレザー株式会社に社名を変更しました。我々ミドリオートレザーグループにおける皮革鞣製部門は、日本、ブラジル、メキシコ、中国に合計4社があります。社名が各々でしたが、何を造っている会社かを明確にするため、4社を同一の社名にしました。
そして、国内はもとより海外の自動車メーカーにアピールし、世界中のお客様に弊社の製品を広くご使用いただこうと、世界に向けて更なる一歩を踏み出したところです」(斎藤さん)。2002年から海外に赴任し、昨年山形に戻ってきたばかりという斎藤さん。様々な経験をもつ頼もしいリーダーが考える今後の会社の在り方について「これからは、技術の革新などは勿論ですが、業績の伸長のためには人材の確保が重要となってきます。従業員の方々が安定した環境であること、すなわち、しっかりと仕事があり安心して働けるように会社としても積極的に支援していきたいと考えています。従業員の皆さんには、前向きについてきてほしいですね」
◎女性活躍の推進・女性技術者の採用
同社は、1991年3月に現在の工場にて操業を開始し、同時期に女性技術者の採用をはじめた。現在は、10名の女性技術者が活躍し、繊細できめ細やかな点が特に評価されている。「当社では牛の本革を扱いますが、一頭一頭で微妙に皮も異なります。そのあたりが天然皮を扱う難しさと言えるでしょうが、そんなファジーな部分は、女性ならではの感覚が有効だと考えています。また、女性社員の管理職登用にも、女性の活躍にスポットをあて前向きに検討していきたいと思っています」と語る総務部部長の加勢さん。
実際に、女性技術者として働く脇坂さんに話を伺った。脇坂さんは、主にメーカーと打ち合わせを行い、メーカーの要望に応じて試作品を製作するセクションで、サブリーダーとして活躍。皮製品の加工過程に携わって長い経験をもつ脇坂さんだが、男性の多い職場で働くにあたり感じる点について、「扱う皮は、牛一頭を半裁したもので女性が一人で持つには大きく重労働で男性社員との体力の差を感じるところです。また、冬場は皮が固く、手が荒れやすいので大変ですね。でも、外部の方からの電話の取り次ぎなどは、女性が受けた方が柔らかい印象で良いのではと感じていますし、他には、例えば同じ「A」という注文に対して女性ならではの視点で「A’(エーダッシュ)」にしてお客様に提案できるような、“気づき”が多いところなどが仕事に活かせているのではと思っています」
脇坂さんが感じる会社の良さについて、「弊社では、会社と社員との相互で組織する安全衛生委員会があります。私が入社して間もない頃、女子トイレの数が少なく不便であると伝えたところ、検討していただき改善されました。この会社では、社員の声を受け入れてくれるため、安心して働けると感じています」
◎女性社員の勤続年数が長いこと、配慮していること
同社では、女性社員の平均勤続年数が(育児休業期間を含め)15年以上と長い。その背景について「弊社では、産休・育休の取得はもちろん、個々の事情に合わせて、休業期間延長などの要望にできるだけ応えるようにしています。また、夫婦で勤務する社員も多く、男性育休の活用で子育て中の夫婦が協力しやすいこともあるのではないでしょうか。会社としても、社員には継続して勤めてもらいたいですし、経験によって蓄積された社員の能力は貴重な財産です」と加勢さんは語る。
◎会社のバックアップあっての仕事と家庭の両立
勤続約10年の寺崎さんは、総務部所属。2歳になる女の子の母親、そして妻として仕事と家庭の両立を見事に実現している女性である。寺崎さんは、お子さんが1歳になるまでの休業に加え、お子さんが待機児童となったために3ヶ月間休みを延長し、昨年4月に職場復帰を果たした。「現在は、会社の育児短時間勤務の制度を利用し15時から17時15分までの2時間15分を短縮し、働いています。自宅から会社への通勤時間が、夏場なら30分のところ、冬場は1時間程かかってしまうこともあり、11月から4月までの間、短時間勤務を予定しています。朝、娘を保育園まで主人が送り、帰りは私が迎えに行くというスタイルで夫婦協力して子育てをしています。しっかりと仕事をして、娘を迎えに行き、家族のためにきちんと料理を作ることができるので、子育て中の私にとって育児短時間勤務制度は大変有り難いものです」と語る寺崎さん。「同じ部署の女性社員の中では、私が一番年上で同僚には色々な面で気を使って頂き感謝しています。ですから、ほかの同僚が結婚をして子育てをするときには、自分がお世話になった分をお返しする意味でも積極的にサポートしたいなと思います」
◎会社が考える仕事と家庭の両立支援について
理事・総務部部長 加勢 邦雄さん
社内のワーク・ライフ・バランス推進員として先頭に立つ総務部部長の加勢さんは、仕事と家庭の両立支援の現状について「山形労働局による子育てサポート企業・くるみん認定企業は、女性育休が100%以上、男性育休取得者が2名以上となり一般事業主行動計画の目標が達成できたことが大きいと思います。育休取得については、社内報や社内メール、食堂や休憩室にお知らせとして貼り出し、社内に広く周知され取得しやすい雰囲気になったと考えます。社員の皆さんには、子育てに理解のある会社との理解が広がったと思います。また、現在子育て中の総務部の寺崎さんのように、本人の要望にも応えるという会社側の姿勢やお互い様という感覚が大切だと思います。また、介護休業制度についても取得推進を社内に展開し、該当者に知らせました」と語る。そして、仕事と家庭の両立支援の今後の方向性について「現在実行中の一般事業主行動計画では、子の看護休暇制度も小学校就学前にするなど、さらに育児についての支援を強化しております。会社の制度は、家庭に目を向けるきっかけにしてほしいですし、各々の家庭がしっかりあって、そして仕事へのやりがいを感じてほしい。支援制度を活用して仕事と家庭の両立を図ってほしいですね。やはり、会社の業績伸長のためには、社員の安定した生活が欠かせないと考えます。皆さんが安心して働けるよう、会社としても社員の支援に積極的に取り組んでいきたいと思います」
◎男性社員が育児休業を取得
勤続年数約10年の鈴木さんは、現在5歳の女の子と0歳の男の子の父親でもある。奥様が長女を出産した際、産後が大変だった経験もあり、二人目を出産する前に奥様から育休取得を奨められたという。そこで昨年の10月に2週間育休を取得した。「育休中は、息子にミルクをあげたり、長女の世話も積極的に行いました。自分が家のことや子供の世話を行うことで、妻はゆっくりと身体を休めることができたと思います。また、共働きの家庭なので、役割を分担しながら夫婦協力して子育てをしていきたいと思います」と鈴木さんは語る。「会社の育児休業などに対する体制がしっかりしているので、自分も家族も安心して育休を取得することができました。会社を休んでいる間、協力しながら、スムーズに仕事を進めてくれた同僚にも感謝したいです」
◎男女ともに働きやすい職場づくり
同社の有給休暇取得率は、平成23年が40.8%、平成26年には57.2%と向上している。お正月、ゴールデンウィーク、お盆はそれぞれ一週間はしっかり休むよう、以前から声がけをしている。また、日ごろから業務の情報共有化をはかり、特定の社員がいないと仕事が回らないということがないように調整している。
さらに、早い段階でハラスメント防止に取り組んでいる同社。昭和61年に「ハラスメント防止規定」がセクハラ規定として制定され、平成24年6月1日にパワハラ規定を追加している。ハラスメント対策窓口を担当する総務部次長の横沢さんは「相談ごとは、月平均で20件程あります。心がけていることは、相談相手としっかり向き合って時間をかけてじっくりと聞く事です。聞くということが最大の目的で、双方のいい分や周囲の感じ方など事実確認を踏まえた上で、解決の糸口を導き出します。窓口を設けていることで、深刻な問題に発展する前に解決できることもあり、社内の風通しは良くなっているのではと思っています」と語る。
また、新たな試みとして上司と部下との一対一の面談を始めた。事前に、仕事への要望や頑張っていること、気になっていること、上司への意見などをアンケートに記入し面談に望むスタイル。面談を通して、上司からのアドバイスなどを本人にフィードバックし、社員の意欲の向上や会社発展へ繋げることを目的としている。会社は社員を大切に思い、社員は会社発展のために前向きに行動する、海外を舞台に活躍するための企業の取組みに今後も注目したい。