H27「労働やまがた12月号」今月のひと

県立職業能力開発施設卒業生
株式会社東北日立
山形本部 工事管理グループ
今 美樹さん

 県では、4つの県立職業能力開発施設(産業技術短期大学校山形校・庄内校、山形職業能力開発専門校、庄内職業能力開発センター)を設置し、日々、学生さんたちがものづくりの技術等を学んでいます。
 平成24年度に産業技術短期大学校山形校(以下、「産技短」という。)建築環境システム科を卒業された今さんは、学生時代に技能五輪全国大会に出場するだけではなく、山形市長賞を受賞されるなど優秀な成績を修められました。この度は、学生時代の思い出や現在のお仕事などの話を伺いました。
【お仕事の内容について】

今さんのお仕事の内容について教えて下さい。

  主に業務用の空調設備の設計と現場の管理をしています。
 空調設備設計はエアコンなどを新規に設置する、または移設をする時に、空調の熱負荷やランニングコストを計算し、お客様にご提案するための設計図面を作成します。この設計図面は営業をする際のサポートとなります。
 工事をする段階になったら、現場で作業の指示などをするため直接立ち会い、完成するまでの工程管理をします。

空調設備設計について詳しく教えてください。

  建物がある地域や場所、日当たり、窓の大きさ、部屋の大きさ、人、機械、パソコンからの発熱など、容積に対しての熱負荷を計算し、人数や部屋の用途に合わせて空調設備の機器を決めます。その機器の設置場所と配管を設計しますが、積雪の多い地域では室外機の高さや専用の屋根などが必要な場合も出てきます。
 また、改修やエアコン機器の移設などの場合には、既存の機器を使用した場合と新たに設置した場合の比較が必要になりますので、ランニングコストを計算し何通りもの案を作成してお客様へ提案をします。

設計だけではなく実際に現場にも行かれるようですが、現場ではどのようなお仕事をされるのでしょうか。

  施行作業はしませんが、打ち合わせや立ち会いで現場に行きます。高い所での作業がある場合は作業をする業者の方が転落しないように足場の確認をしたり、ヘルメットの着用、下を通る人の誘導など事故がないように現場で直接確認・指示をします。

【現場でお仕事中の今さん】
仕事をする上でどのようなことを心がけていますか。

  お客さまからのご希望を第一に考え、簡潔にわかりやすく伝えることを常に意識しています。設計図面も平面図以外に、横から見た図や写真を添えるなどしてお客さまがイメージしやすいようにご提案するようにしています。
 初めは部品や部材、専門用語などもわからないことが多く、現場で先輩にその作業の意味ややり方などをひとつずつ教えてもらい覚えました。作業をする業者の方にも、わからないことはその場で聞いたり相談したりするなど、色々な方に頼りながらでまだまだ勉強中です。しかし、教えてもらったことはメモを取ったり、写真を残したりと今後に活かせるようにしています。
 現場では、年上の方や業者の方に言いづらい時もありますが、事故が起きてからでは遅いので、しっかりと伝えることは伝えています。

今さんは入社して3年目ということですが、仕事での難しさややりがいを教えて下さい。

  お客さまによっては改装工事などで、土日の作業になる場合もあります。決められた時間内で作業を完了することが必要ですので、段取り良くお客様にも作業の業者の方にも迷惑がかからないように、工程管理の面が難しいです。
 最近ではおしゃれな建物や窓が大きい建物、円形の建物、天井の高い建物なども多くあります。窓が大きければ光がたくさん入り、ブラインドを閉めても暑く熱負荷が大きくなり、大きいエアコンが必要になることもあります。しかし、お客様はなるべく生活感あるエアコンなどを見せずに上手く隠したい、コストをかけたくないなどの要望をお持ちのことがありますので、費用の面と併せて設計をする必要があります。
 最初に一人でお客さまの所で説明をした時には手が震えましたが、事故もなく工程通りに無事にお客様にお引き渡しが出来た時には良かったとやりがいを感じます。

【設計室でお仕事中の今さん】
【今さんご自身について】

今の仕事を目指したきっかけを教えて下さい。

  明確な目標もなく工業高校の環境システム科に入学しましたが、工業系の勉強をしてみると楽しく、勉強の仕方などもわかってきたことから成績が伸び始めました。そして、高校卒業後の進路を決める時も、高校の先生から設備に向いていると勧めてもらったこともあり、引き続き設備や建設の勉強が出来る産技短に入り、今まで学んできたことが活かせる仕事をしたいと思い今の仕事に就きました。

勉強が楽しくなったのはいつごろからですか。

  高校に入学した間もない時期で、中学ではない工業系の科目が入ってきて、自分なりに勉強してみようと取り組んだところ、理解することが楽しくなり、「そこからこうすれば出来るんだ」とノートのまとめ方も変わってきました。一般的な科目よりも工業系の科目の成績が良かったことで自信が出てきたこともあります。

女性で空調設計の仕事をしている方は少ないのではないでしょうか。そのような中この仕事に就くことへの抵抗はなかったのでしょうか。

  高校でも産技短でも女性の同級生はいましたし、先輩でも設備の設計や、現場に行っている人もいるので女性は少ないかもしれませんが抵抗はなかったですね。

資格もお持ちのようですが、今後の資格試験と仕事と勉強の両立について教えて下さい。

  今は2級管工事の取得を目指していて、大学の時に学科の方は取得しましたが、実地試験を受験するのは2年以上の実務経験が必要になるので3年目の今年に受験をします。実地試験の内容は、現場管理の仕事で必要な、現場での危険箇所や危機を回避するための考えを簡潔にまとめ作文にする試験です。
 仕事をしながらの勉強は、家や朝早く来て会社で勉強する時もあります。勉強の方法としては、わからない用語や部材をわからないままにせず調べることを徹底し、過去の問題を繰り返し解いています。試験問題の中には現場で目にする部材があり、実際に現場に立ち会って仕事をしている経験が役に立っていると思います。

【インタビュー中の今さん】
【山形県立産業技術短期大学校について】

学校の雰囲気や設備はどうでしたか。

  クラスではわからないことを教え合うなど和気あいあいとした雰囲気でした。パソコン室で友達とお喋りをしたり、2年生になるとゼミの先生も交えて、サプライズの誕生月会をしたりと楽しく過ごしました。中には県外に就職した人もいますが、ゴールデンウィークやお盆に集まったり、時々先生に会いに行ったりもしています。
 学校の設備についてですが、卒業時の実習で、実際にある設備に自分たちで設計し配管をすることが出来ます。そういった面では産技短の設備はとても充実しているので、専門の業種を目指す人にとってはありがたい学校だと思います。

在学中に「山形市長賞」を受賞されたと伺いました。どのように勉強に取り組んでいましたか。

  授業が多く、授業の進むペースも早いので授業中に覚えられることが限られていました。でもその授業量のおかげかもしれませんが、教科書やテキストのどこに何が書いてあるか、ノートの取り方、まとめ方、テキストの使い方、用語の説明の場所など、効率の良い方法を自分なりに考えながら勉強することが出来たと思います。それが今の資格の勉強にもつながっているように思います。

文化祭の実行委員もされたとのことですが、その時の思い出についてお聞かせください。

  当日に実行委員のひとりが不在だったこともあり、本当に大変だったという思い出が残っています。さらに、仮装コンテストのメンバーが集まらなかったり、パンフレットの作成がうまくいかなかったりもしました。時には、夜遅くまでの作業もありましたが、先生方の協力もいただき最終的に成功することが出来たと思います。

在学中に「配管職種」で出場した技能五輪全国大会について教えて下さい。

  出場のきっかけは先生からの勧めで滅多にない機会と思いチャレンジしました。
 その時の開催地は長野で、会場の雰囲気がとても盛り上がっていて、観客やカメラマンの数も多く、配管職種で女性が珍しいということもあり、多くの方が作業を見に来ました。普段人から見られて作業することがなく、そのような環境に慣れていなかったのでその点が一番緊張しました。

これから技能五輪大会に出場する方へのアドバイスはありますか。

 限られた時間での練習になると思いますが、精度はもちろん、時間内に完成することを考え、いかに早く要領良く完成出来るかを練習中に見出すことが大切だと思います。
 他には、大会会場では休憩時間に他の選手の作業の進み具合や、工具の配置によっても作業の効率が変わってくるので工具の配置などを観察し参考にすることも出来ると思います。

大会自体も学ぶ場所になっているんですね。大会出場の経験は今の仕事に活かされていますか。

  自分の作業の方法や同じ県の選手の方法しか知らない中、大会に出場することで、実際に働いている人や他の県の人はどのように作業しているのかなど、作業の進め方や工具の配置なども勉強になりました。
 他には、大会の3か月ほど前から授業が終わったあとに練習をしていましたが、給水配管で使用する配管を覚えることが出来、練習したことが少しずつ積み重なり今の仕事に活きていると思います。

後輩にメッセージをお願いします。

  まずは、学校でも宿題やレポートなどは期日までに提出するなど、やるべきことはしっかりとやることが大切だと思います。そして、仕事を始めてからでは勉強をする時間がどうしても限られてきます。必要がなかったという資格はないと思うので、取れる資格があれば積極的にチャレンジした方が良いと思います。高校の時にも取っておけば良かったと後悔していることもあるので、資格はどんどん取って、自分の強さにして欲しいと思います。

最後にこれからの目標を教えて下さい。

 同じ失敗を繰り返さないようにし、現場で判断が必要な時にすぐに判断出来るように勉強し頼られる人になりたいと思います。それには日々、勉強が必要で、先輩からよく学び会社にも貢献出来ればと思います。

 
2015年12月1日